267.バグストライカー6
「ところで、ファイタス。その、ロボット――バグストライカーはどこに置いたんだ? まさか、家の前の道路じゃないだろうな。この辺りは路上駐車禁止だから、警察が来るぞ」
「ん? チューシャキンシ? なんかよく知らんが、バグストライカーなら、この家の上空に静止させてある」
「にーに、車じゃなくてロボットなんだから、路上駐車、当てはまらないんじゃないの」
「つーか、ロボットが家の前に立っていたら、警察が来る前に野次馬が押し寄せるだろ。何しろ、今テレビで話題のロボットなんだから、騒がしくなって直ぐに判るぜ」
ツヨシに、アオイとハヤトが突っ込みを入れた。
家の周りの静けさに変化は無い。
「ロボットがうちの上空にあるって……、それ、落っこってこないのかしら?」
「それよりさ、それ人に見られたら大変だよ」
アオイとコウジが心配したが、
「ステルス機能を働かせてあるから、誰にも見つからんよ」
ファイタスは何も気にしていない様子だった。
「すてるすきのー?」
ミドリの問いに、
「そ。ミドリの超能力と同じだな」
とファイタスは返したが、
「だから、そういうチカラは、今の私たちには無いんだってば」
ミドリはちょっと怒ったような顔をした。
「ふむ。超能力が無い上に、子どもに戻ってしまったドライバウターか。チャコやダイゴにいたっては、赤ちゃんみたいなもんだしな……」
ファイタスは考え込むような仕草をした。
「ファイタス、あなたは、これからどうするつもりなの?」
言われてファイタスはアオイの顔を見た。
「ま、しばらくはこの世界にとどまる事にするわ。アオイ、アカネ。あんたらの真似をしてな」
ファイタスは続いてアカネに視線を移した。
「「私達の真似?」」
アオイとアカネはハモった。
巨大クワガタとロボットの騒ぎがあった全校遠足は金曜日だった。
土日を挟んでの月曜日。
さし当たり、小学校では通常通り授業が行われる事になった。
月曜の朝といえば、朝会がある。
「えーー、今日は全校の皆さんに、新しい先生を紹介します」
校長先生に促され、壇上に上がった大男を見て――。
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
ミドリ、ヒロシ、モモコ、タダシは、それぞれの学級の列の中で思わず声を上げた。
なんとそれは、スーパーロボット、バグストライカーのパイロット、ファイタスその人だったからだ。
「皆さんに、英語を教えてくださる、外国人講師のファイタス・ストライカー先生です。それではファイタス先生、自己紹介を」
「イッエーーイ、エブリバディ! アイアム、ファイタス・ストライカー。皆さんと、なかよくべンキョーできるのを、楽しみにしてまーーす。よろしくお願いしまーーす」
ファイタスは、いかにも日本語覚えたてですみたいな喋り方の外国人調日本語で挨拶をした。
実際は、夕べのように流暢な日本語が話せるのだから演技しているのだ。