264.バグストライカー3
それでも負けまいと巨大クワガタは角を閉じようとした。
バキッと、物凄い音が辺りに響いた。
巨大クワガタの角は、その付け根から粉々に砕け散ったのだ。
すかさず、ロボットは右足で巨大クワガタを蹴り上げた。
その巨体は、軽く100メートルは浮かび上がった。
ロボットは両肩の砲門からビーム砲を放った。
太い2本の閃光は、巨大クワガタのボディに収束。
巨大クワガタは爆音と共に砕け散った。
ロボットの圧倒的な勝利だった。
ロボットは背中のロケットエンジンをひと噴射して宙に舞うと、ミドリ、ヒロシ、モモコ、タダシの眼前に着地した。
大地が揺れる。
ロボットはゆっくりかがむと、左膝を地に着けた。
右手を胸元に持っていく。
ロボットの胸元が開いた。
中にはパイロットと思われる人間が座っていた。
胸の中がロボットの操縦席になっていたのだ。
パイロットは、ロボットの右手の平にぴょんと跳び乗った。
右手はパイロットを乗せたまま、ゆっくり地上に降りてきた。
「大丈夫か?」
フルフェイスのヘルメット越しに男の声がした。
大柄な体格だ。
テレビのロボットアニメでよく見るようなデザインのコスチュームに身を包んでいる。
パイロットは、ミドリ、ヒロシ、モモコ、タダシに近づいてきた。
「ん……、おまえ……」
パイロットはそこで言葉を切ると、ヘルメットを外した。
30歳ぐらいの、外国人の男性だった。
「ミドリ……、じゃねのか?」
「「「「えっ!?」」」」
驚く4人。
ミドリに、30歳ぐらいの外国人の男性の知り合いはいない。
もちろん、ヒロシ、モモコ、タダシにも心当たりが無い。
それなのに、男性は、
「――って事は……、そっちのちっこいやつらは、まさかヒロシに……、モモコ、タダシか!? 間違いねえ。小さくなってるから一瞬判らなかったぜ!」
と、ミドリの事はもちろん、ヒロシ、モモコ、タダシの事まで知っている様子だったのだ。
「あ、あのう……、助けてくださってとてもありがたいのですが……。あなたはどなたでしょう? 私達、あなたの事を知らないのですが……」
「本当かよ? こりゃあ、いろいろと説明がたいへんそうだな……」
外国人の男性は、欧米人がよくやる、やれやれといったオーバーアクションを見せた。
「おーい、志武ううーーーー」
「大丈夫かああーーー」
遠くから声がした。
巨大クワガタの危機が去ったからだろう。
避難していた学校の教師達が、ミドリ、ヒロシ、モモコ、タダシたちのもとへ走ってくるのが見えた。
「おっと、このままここに居たんじゃ、面倒な事になるな。また、来るからな、ドライバウター」
外国人の男性は、そう言い残すと、すばやくロボットのコクピットに戻り、ロボットを起動させると、あっという間に空高く飛び去ってしまった。