262.バグストライカー1
その日、志武兄弟の通う小学校は全校遠足だった。
ミドリ(小5)、ヒロシ(小4)、モモコ(小2)、タダシ(小1)も、兄姉達に作ってもらった弁当を持って、意気揚々と出かけた。
行き先は町外れの公園。
志武兄弟も時々行く、よく知った場所だが、学校の友達と遠足で行くとなると、それはそれで楽しい場所となるのだった。
昼食を終えての昼休み。
小学生たちは思い思いに過ごしていた。
「ねえね、おにごっこやろーー」
タダシが同じ1年生の友達とミドリのところにやってきた。
「ミドリちゃん、やろーー」
「やろー、やろー」
自分の友達とおしゃべりをしていたミドリだったが、
「しょーがないなーー。じゃあ、10数えるから逃げて」
と、1年生達のリクエストに応じる事にした。
「いーち、にーい、さーん……」
顔を伏せてミドリが数え始めると、1年生たちはワーキャー言いながら逃げ出した。
ズズン!!
突然、大地が揺れた。
「地震!?」
顔を上げ、立ち上がるミドリ。
地面は激しく揺れ、真っ直ぐ立っているのがやっとだった。
すばやく辺りを見回す。
少し離れた場所にタダシが友達と居るのを見つけた。
ヒロシとモモコはどこだろう?
ぐらぐらと揺れが大きくなってきた。
ミドリは膝と手を地に着いた。
目の前の森の中からバキバキと音がした。
木々をなぎ倒しながら、ギザギザの巨大な黒い何かが2本、地面から生えてきた。
「ねえね、なんだ、ありゃ。クワガタの角か?」
いつの間にか、ヒロシがミドリの右横に来ていた。
「まさか、怪獣?」
左横にはモモコも来ていた。
「よかった! 2人とも無事だったんだ」
安心するミドリ。
小学生たちは、黒い巨大なクワガタの角から悲鳴を上げて逃げ始めた。
転ぶ者、踏まれる者、泣き出す者。
公園は大混乱に陥った。
「ねえね、私達も逃げないと!」
「モモコはヒロシと逃げて!」
「ねえねはどうすんだよ?」
「私はタダシを!」
ミドリは、さっきまでタダシが居た方向を見やった。
しかし、姿が見えない!
必死に逃げる大勢の小学生の姿に隠されて、どこにタダシが居るのか判別不可能だった。
「タダシ!」
ミドリは、ともかくタダシが居たと思われる方へ走り出した。
「待てよ、ねえね!」
ヒロシはモモコの手を引き、ミドリを追って走り出した。
逃げ惑う小学生の流れを横切るように進むミドリ、ヒロシ、モモコ。
流れを抜けると、運良くタダシを発見できた。
タダシは転んで膝をすりむいていた。
「タダシ!」
「あ、ねえね。それに、ヒロ兄にモモちゃん!」
心細そうだったタダシの表情が明るくなった。
「走れる? 私がおんぶしてあげようか?」
「ねえね、おんぶならオレがするよ」
「2人とも、後ろーー!」
モモコの悲鳴に、ミドリとヒロシは振り返った。