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256.異次ナビ14

「ナプル!」

 メローナがもう一度叫んだ。

「……」

 ナプルがゆっくりと目を開けた。

「あ……、おねえちゃん」

「大丈夫なのね? 今、行くわ」

 メローナは腰をかがめた。

 これからジャンプしようというのだろうか。

 そのメローナの手前の地表に、何本かの細長く鋭い矢のような物が突き刺さった。

「何?」

 腰はかがめたまま、メローナは警戒の態勢をとった。

「待て……、勝手な事は許さん……」

 薄暗がりの中から、巨大な影が現れた。

「きゃあっ」

 チャコ(年中)が悲鳴を上げてハヤト(高1)にしがみついた。

「こわい!」

 ダイゴ(年少)もミドリ(小5)に抱きつく。

 現れたのは、ヨーロッパの古典に登場するような悪魔の姿そのものの怪物だったからである。

 頭は巨大な角を生やした山羊。

 体はたくましい人間のそれだが、背中にはコウモリの羽。

 下半身は毛むくじゃらの獣の姿で、手足の指には鋭い爪を生やしていた。

「こいつは必要なのだ……。返すわけにはいかん……」

「ほい! ひろいほほー、ひゅーら」

 ツヨシ(大2)が舌の痛みをこらえながら「おい! ひどいことを、言うな」と叫んだつもりだったが、うまく言葉にならなかった。

「おい、酷い事を言うな」

「いかにも悪魔ですって顔だな!」

「このバケモノやろう!!――と、にーにが言ってるぜ」

「ちょっと! ハヤトもコウジもヒロシも無駄に相手を刺激しないでよ」

 アオイ(大1)が血気盛んな弟3人をたしなめる。

 怪物の口が開いた。

 こういう時、次は口から何かが出てくるのが定番だ。

 一同は散開した。

 正解だった。

 怪物は口から火を吐いたからである。

「シャレになんない!」

「きゃあ! 髪が燃えちゃう」

 キイロ(中2)とアカネ(高2)が頭をおさえる。

 特にアカネは髪が長いだけに大変だ。

「こんなろーー!」

 ミサイル係のモモコ(小2)がミサイル発射ボタンを押した。

 志武家の車からミサイルが発射され、怪物に向かう。

 怪物は体が大きいためか、動きは鈍かった。

 といって、よける素振りも見せなかったのだが。

 モンスターワールドでずっと暮らしてきて、ミサイルという人間の武器を見た事がなかったのかもしれない。

 二発のミサイルは怪物の胸元に命中した。

 怪物の体はぐらりと揺らぎ、どおおーーんと轟音を響かせて地に倒れた。

「え? も、もうやっつけちゃったの」

「あっけなーい」

 ミドリとタダシ(小1)が、ほっとしたような拍子抜けしたような声を出す。

「ぐ……、ぐぅぅぅぅ~~」

 怪物がうめいた。

「とどめのもう一発う」

「まへ(待て)」

 ミサイル発射ボタンを押そうとするモモコをツヨシが止めた。

 怪物の前に、小さな人影が立ちはだかったのだ。

 人影といっても、それもまたモンスターだった。

 上半身は人間の少年だが、下半身は山羊のそれだった。

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