252.異次ナビ10
「その君の弟、ナプルは今どこに?」
「はい、ええと……」
メローナはツヨシ(大2)の顔を見て何か聞きたそうだった。
「あ、俺たちの名前か? みんな、自己紹介」
ツヨシの呼びかけに応じ、兄弟達は順に名乗った。
「ありがとうございます、ツヨシさん。皆さん全員の顔とお名前の認識を完了しました」
「さすがロボット……ガイノイドだな。一発で十二人全員の顔と名前を憶えてしまったのか」
「恐れ入ります、ヒロシさん」
「――で、メローナ、ナプルの居場所だが?」
「はい、ツヨシさん。私の体に内蔵されている認識システムによれば、西に五キロほど進んだところにナプルはいるはずなのです」
「西というと……、ここから見ると、さっき、君が襲われていた植物たちの、その向こう側だな」
「はい……」
「にーに、助けてあげようよ」
「そうよ、弟と離ればなれなんて可哀想」
特撮ヒーロー好きのタダシ(小1)とアニメヒロイン好きのチャコ(年中)が息巻く。
こんな時、正義の味方は困っている者に必ず救いの手を差し伸べるものだ。
それに姉弟のピンチと聞き、彼ら志武シブリングスが黙っていられるわけがない。
彼ら十二人の絆はとても強いのだ。
「タダシ、チャコ、俺たち兄弟全員同じ気持ちだぜ。そうだろ、にーに?」
「ああ、ハヤト。――メローナ、及ばずながら、俺たちに君の弟ナプルを救い出す手伝いをさせてくれないか?」
「手を貸してくださるのですか? こんな嬉しい事はありません」
メローナの表情が喜びに輝いた。
まるで人間だ。
とてもメローナが機械でできているようには見えない。
「でも、どうやって、あの大口の植物たちを突破すればいいかな?」
「コウちゃん簡単だよ。空飛んでいけばいいんだ」
さっき「空」のスイッチを押したヒロシ(小4)が言う。
「そうだよね、わざわざ地面走らなくても、あの植物たちの上をひとっ飛びしていけばいいんだ」
「アネキ、そういう事」
「じゃあ、ヒロシの言う通り、空から行こう。メローナ、君も俺たちの車に乗り込んで。狭いが我慢してくれ」
ツヨシの言葉で、全員車に乗り込んだ。
ダイゴ(年少)をミドリ(小5)が膝に抱き、チャコをメローナが膝に抱いた。
「チャコさんすみません、私の膝の上で我慢してくださいね」
「うん、大丈夫。メローナ重くない?」
「はい、もちろん、大丈夫ですよ」
メローナはにっこり笑顔で答えた。
「よーし、じゃあ、行くぞ! ヒロシ、『空』のスイッチオンだ!」
「オッケーー!」
ヒロシがボタンを押すと、車に先程同様翼が生えた。