251.異次ナビ9
だが、ツヨシ(大2)が言葉を失ったのは、女性の片腕が無かったからだけではない。
失われた肘の先からは……、コードやらスプリングやら金属のパイプやらがはみ出しているのが見えていたのだ。
「このお姉ちゃん……、ロボットなの?」
ダイゴ(年少)がおずおずと遠慮がちに言った。
「はい……、その坊やの言う通り、私は人間型のロボットです」
「という事はアンドロイド?」
「女性型なので、正確にはアンドロイドではなくガイノイドというのですが。名前はメローナと申します」
コウジ(中1)の問いに対し、メローナははきはきと喋った。
とても機械の音声には聞こえない。
「メローナ……、君はどうして襲われていたんだい? この世界の……、モンスターワールドの住人なのか?」
「いいえ……、私はモンスターワールドの住人ではありません。私はロボットワールドで暮らしていたのです。ところが、私の弟が、このモンスターワールドに迷い込んでしまい、私は弟を助けに来ました。でも、私もあの巨大植物たちに襲われてしまい……、そこを、あなた方に助けていただいたというわけです」
「ロボットワールド? さっきまで私たちがいた世界ね」
ハヤト(高1)に続き、アカネ(高2)がたずねた。
「え? あなた方は見たところ人間ですよね。ロボットワールドからいらしたのですか」
メローナが少し驚いた様子を見せる。
ロボットでも驚くのだろうかと兄弟達は思った。
「私たちもどうした理由でか、住んでいた世界からロボットワールドや、このモンスターワールドに迷い込んでしまって戸惑っているところなの。でも、メローナがロボットワールドから来たということは、ロボットワールドとモンスターワールドをつなぐ出入口があるという事よね」
「うん。俺たちの異次ナビを使う以外にも異なる世界を行き来する手段があったんだな」
「いじなび? もしかしてそれは異次元ナビゲーションシステムの事でしょうか?」
アオイ(大1)とツヨシの言葉にメローナが問いを返す。
「異次ナビを知ってるの?」
今度はメローナはミドリ(小5)を見て話し始めた。
「はい。私たちは様々なワールドを、異次元ナビゲーションシステムを使って行き来する事ができます。しかし、行き来するとトラブルが起きる事が多いので、実際に異次元ナビゲーションシステムでワールド間を行き来する者は多くはありません。なのに、私の弟のナプルは、興味本位でシステムを使い、このモンスターワールドに来てしまいました」