250.異次ナビ8
辺りを見回す兄弟達。
「あ、あそこ!」
タダシ(小1)が指差した。
林の奥で人が一人倒れている。
上から、何やらうねうね動く蛇のようなシルエットが数本、その人影に襲いかかろうとしていた。
「危ない、助けなきゃ!」
チャコ(年中)が叫ぶのとモモコ(小2)がミサイルの発射ボタンを押すのと同時だった。
兄弟達の車から小型ミサイルが発射され、うねうね動くシルエットの内の二本に命中した。
「みんなはここにいろ!」
ミサイルの発射ボタンを押すために車に入り込んだモモコだけ乗せたまま、ツヨシ(大2)が車を急発進させた。
どんどん人影に接近する。
うねうね動くやつの何本かが、人影よりツヨシの運転する車に狙いを変えて向かってきた。
植物の蔓のような物が何本も地面から生えて、それがぐにゃぐにゃと動きながら迫ってくるのだ。
蔓には所々に葉が生え、先端は蕾のようになっていて、それが開くと、中にはやはり鋭い歯がびっしり並んだ口があった。
このモンスターワールドの植物は、みんな先端に鋭い歯の口を持っているのだろうか。
「モモコ、ミサイルどんどん射て!」
モモコが矢継ぎ早にスイッチを押す。
特に照準を合わせる手間もなく、ただスイッチを押すだけだ。
それだけで、あとはミサイルの方が勝手に目標に向かって飛んでいき命中してくれる。
モモコが蔓を何本も撃ち落とし、ツヨシが倒れていた悲鳴の主の手前に車を急停止させる。
ドアを開け「乗るんだ!」と右手を差し伸べるツヨシ。
倒れていたのは若い女性だった。
何の素材でできているのかは分からないが、光沢のある継ぎ目のない体にぴったりとした服装をしていた。
差し出されたツヨシの手を女性がつかむ。
ツヨシはそのまま女性を助手席まで一気に引っ張り込み、車をUターンさせた。
うねうねの蔓がまた何本か襲いかかろうとしてきたが、車のスピードの方が速かった。
蔓は、限界まで伸びても車に追いつけない事を悟ると、追いかけるのをやめ、地面からぐにゃぐにゃした姿勢で空を仰いだまま動かなくなった。
残る十人の元に車で戻るツヨシとモモコ。
「大丈夫だった?」
「怪我してない」
ドアを開けて車を降りてきたツヨシとモモコに他の兄弟達が駆け寄る。
「ああ、俺もモモコも大丈夫だ。襲われていたのはこの人だ」
先ほどツヨシに救われた、光沢服の女性も車から降りてきた。
「あ、あの……、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる。
「いや、どう致しま……」
体の前に揃えられている女性の両手を見て、ツヨシは言葉が止まった。
女性の左腕が肘から先が失われていたのだ。