248.異次ナビ6
「じゃあ、ここにいくつかあるワールドのどれかが、元の世界につながっているかもしれないよ」
「にーに、どっか別のワールドのボタンを押してみたら?」
コウジ(中1)とキイロ(中2)に言われ、ツヨシ(大2)は決断した。
「どのワールドも、物騒さに変わりはなさそうだし……、順番に行くか! アオイ、モンスターワールドのボタンを押してくれ」
アオイ(大1)がモンスターワールドのボタンを押した。
ロボットワールドに来た時と同じように、周辺の景色がぐにゃりとなり、水にいろいろな絵の具を溶かしてかき混ぜたようになった。
「うぐ……」
「気持ち悪い」
「これは何回やっても慣れそうにないな……」
兄弟達が口々に苦悶する。
やがて……
外の景色が落ち着いた。
今度は兄弟達は気を失わなかった。
前回、元の世界からロボットワールドに来た時は気を失った。
口ではああ言ったものの、兄弟達、この異次元ナビゲーションシステムの与える不快感に少し順応してきたようである。
窓の外の様子は……、まるでアフリカかアマゾンのジャングルだった。
「未来の世界から、一気に原始の世界に来たって感じね」
「モンスターワールドっていうくらいだし、恐竜みたいな怪物が現れるんじゃない?」
「まさかアオ姉、そんないきなり怪物なんて……」
言いかけてアカネ(高2)は言葉を失った。
「アカ姉、どうした……」
ミドリ(小5)も「の?」まで言葉が出なかった。
兄弟達の頭上、車のはるか上に巨大な口があったからである。
その口は円の中にあり、円の外側には様々な色の花びらが。
例えるならヒマワリだった。
ただし、サイズは桁違いに巨大。
そして、花びらの色は黄色だけではなく、赤やら青やら紫やらピンクやら様々。
中央の口からは、何やら粘着質の液体が、ぬらぬらと垂れ落ちてきていた。
その花は、ゆっくりゆっくり近づいてきた。
巨大な口が迫ってくる。
「おい、にーに、この状況って……」
ハヤト(高1)の言葉が言い終わらない内に、ツヨシは車をスタートさせていた。
ガチンと音を立てて口が空を噛んだ。
車の発進が一瞬遅かったら、巨大花の口に車体は噛み砕かれていた事だろう。
「危なかったあ」
「ヒロシ! 安心するのは早いぞ」
コウジの言う通りだった。
大口の巨大花は一本だけではなかった。
見れば辺り一面、大口巨大花の茎だらけである。
その太さは、茎というよりは、樹木の幹と行った方が良かった。
彼らは大口巨大花の森の中に居たのである。
「また、上へ逃げようよ!」
「駄目だよタダシ、上は巨大花だらけで、飛んだらそのまま食べられちゃいそう」
「じゃあ、モモちゃん、土の中は!?」
「そんなチャコ、どうやって土の中に……」
「ここに『ドリル』ってボタンが……」
チャコが車内の天井を指差した。