247.異次ナビ5
12兄弟姉妹の乗る車の両側から突然翼が生えた。
屋根にも翼が生えたので、計3枚。
後部の2本のマフラーは轟音と共に火を噴き、車は離陸したのである。
ヒロシ(小4)が「空」のボタンを押したのだ。
ロボットが振り下ろした腕は、間一髪、空を切った。
「わーー、空飛んでるーー」
「すごーーい!」
タダシ(小1)とチャコ(年中)がウィンドウに鼻をくっつけて下を覗き込んだ。
「こわい」
ダイゴ(年少)はミドリ(小5)にしがみつく。
「おいおい、本当に空飛んじゃったよ」
「にーに、いつの間に空飛ぶ装置をこの車に……」
ハヤト(高1)とコウジ(中1)が言ったが、今までの会話の流れでなんとなく想像がつく。
ミサイルと同じだろう。
別にツヨシ(大2)が車に飛行システムをくっ付けたわけではないのだ。
いつの間にか付いていた。
「ねえ、にーに、飛行機の操縦できるの?」
アオイ(大1)がたずねたが、たずねたアオイだってツヨシが飛行機の免許をもっていないことは知っている。
「まあ、テレビゲームでやったぐらいだが……、とりあえず、ハンドルでどうにかなっているぞ」
事実、車はなんとか安定した状態で飛行を続けていた。
「ねえ、にーに、これからどこ行くの?」
アカネ(高2)がたずねたが、たずねたアカネだってツヨシにもそれは分からないであろうことは分かっている。
「さっきのロボットの親玉やっつけに行くのか」
「なに、のん気なコト言ってるのよ」
ヒロシにキイロ(中2)が突っ込んだ。
「なんか……、タイヘンなことになっちゃって……、あたしたち、おうちに帰れるのかなあ?」
モモコ(小2)が不安げに言ったが、それは兄弟姉妹12人共通の思いだった。
「ねえ、このカーナビ……、じゃない、イジナビだっけ? カーナビみたいなもんなら『自宅に帰る』っていうボタンがあるんじゃない?」
「確かにミドリの言う通りだな。アオイ、ちょっと見てくれ」
「うん、分かった」
アオイが画面のあちこちを押して「自宅に帰る」ボタンを探した。
のだが……。
「なんか、無いみたい」
「無いって……、じゃあ、どういうボタンがあるんだ?」
ツヨシに聞かれ、アオイは読み上げ始めた。
「えーと……、ロボットワールド……、モンスターワールド……、スペースワールド……、ヒストリーワールド……、サイレントワールド……、ダークワールド……」
「なんか、物騒なワールドばっかね」
「最初のロボットワールドって……、ひょっとして、今いるこの場所のことじゃないのか?」
アカネに続いてハヤトが言ったが、おそらくその通りだろう。