246.異次ナビ4
「にーに、こっちもビームとかミサイルとか無いの?」
チャコ(年中)が反撃を促すが、
「あるか! こっちはフツーの乗用車だぞ」
ビームをかわすため、ハンドルを右に左に切りながら、ツヨシ(大2)が大声で答える。
「ねーねー、でも、ここに『ミサイル』って書いてあるよ?」
「ええ?」
タダシ(小1)が指したドア内側のボタンを兄姉たちが覗き込んだ。
確かに「ミサイル」と書かれた丸いボタンがドアの内側に付いている。
「こんなボタン、この車にあったっけ?」
ヒロシ(小4)がいぶかるが、
「何でもいいから押してみようよ!」
と、台詞を言い終わった時にはもうモモコ(小2)がボタンを押していた。
バシュッと車の後ろから音がした。
兄弟達には見えなかったが、車後部のライトが開き、なんとそこからミサイルが発射されたのである。
リアウインドウ越しに、二本のミサイルが煙を吐きながらロボットたちに飛んでいくのが兄弟達には見えた。
ちゅどおーーーーーーんんっ!!
ミサイルは見事二体のロボットに命中。
ビームを撃ちながら追ってくるロボットの数は三体に減った。
「すげえ!命中したぞ」
「にーに、いつの間に車にミサイルなんか付けたのよ?」
コウジ(中1)とキイロ(中2)が驚くが、驚くのは必死にハンドルを切っているツヨシも同じだった。
「だから、もともとこの車にミサイルなど無いって!」
右に左に車を走らせながらツヨシが叫ぶ。
三体のロボットたちはビームを撃ちながら追いすがってきた。
「もともとあってもなくてもどっちでもいいからミサイル撃って!」
アカネ(高2)の勢いに押され、モモコはまたまたボタンを押した。
ミサイルが発射される。
しかし、今度のミサイルは外れてしまった。
――というより、ロボットたちが走るコースを変えてかわしたのだ。
さきほど仲間の二体が撃たれたのを見て学習したのだろう。
知性をもつロボットのようだ。
三体のロボットたちは間近に迫ってきた。
「追いつかれちゃうよ~~」
ダイゴ(年少)が悲鳴を上げながらミドリ(小5)にしがみついた。
「ミサイルがあるなら、空飛ぶ装置とかもないのか!」
「そんなのがありゃとっくに飛んで……」
ハヤト(高1)の言葉に答えようとしてヒロシの言葉が止まった。
「どうしたの?」
チャコがヒロシを覗き込む。
「これ」
ヒロシがドアの内側に付いているボタンを指差した。
ボタンの上には漢字一文字。
「これ、なんて読むの?」
チャコが読み方を尋ねたその漢字は「空」だった。
「そら」
「なに! 『空だと?』」
ヒロシの言葉にツヨシが叫んだ。
「その『空』のボタンを押せーー!」
ロボットたちがマジックハンドの腕を車のリアウィンドウめがけて振り下ろしてきた。