244.異次ナビ2
「な、なにこれ?」
「気持ち悪い! 酔っちゃう」
チャコ(年中)とモモコ(小2)が悲鳴を上げる。
「ねえね、こわい」
ダイゴ(年少)は隣のミドリ(小5)に抱き付いた。
「にーに、どうなってんだよ?」
ハヤト(高1)が聞くが、ツヨシ(大2)にだって分からない。
「何が何だか、俺にも分からん!」
車は走っているのか止まっているのか、それとも宙に浮いているのか地に沈んでいくのか……、兄弟達は不思議な感覚を覚えた。
「こ、これがイジナビのゲームシステムかなんかなの?」
頭を抱えながらコウジ(中1)が言えば、
「これはちょっときついわね」
アカネ(高2)もつらそうにロングヘアーを揺らしながら頭を振った。
「にーに、ケーブルを抜いたら?」
「アオイ、抜いてくれ!」
ハンドルを両手でしっかり握っているツヨシに言われ、アオイ(大1)はイジナビのケーブルに手をかけた――が。
「抜けない! なんか、きつく入っちゃってる」
「アオ姉、俺がやる!」
後ろの席から乗り出して、ハヤトが渾身の力でケーブルを引っ張った。
しかし、抜けなかった。
「いったい、どうなってるんだ!?」
窓の外の風景の色や形の変化が激しくなってきた。
「な、なんか、最高に気分が悪い!」
ヒロシ(小4)が顔をしかめる。
兄弟姉妹、全員が苦悶し、やがて――意識を失ってしまった。
「……」
ツヨシは目を覚ました。
いったい、どれくらい意識を失っていたのだろう?
車の室内を見回す。
十一人の弟妹たちは皆まだ気を失っている。
「おい、アオイ。起きろ」
ツヨシはまず隣のシートで気を失っている直ぐ下の妹の肩を揺すった。
「う、う~~ん……、あ、にーに?」
「よかった……、怪我はないか?」
アオイは体のあちこちを動かしてみた。
「うん……、どこも痛くないみたい」
「よし、みんなをともかく起こそう」
ツヨシとアオイは弟妹たちに次々声をかけた。
幸い怪我をしている者はいなかった。
「いったい、あれからどうなったの……?」
「なんだったんだ、あれは……?」
頭を抱えるアカネとハヤト。
「なあ、ここ、どこだ?」
ヒロシの声に、兄弟たちは一斉に窓の外を見た。
今までお互いの安否を確認するのに気を取られ、外の様子にまで気が回っていなかった。
外の様子を確認すると……。
そこは見たこともないビル街だった。
ビルの形が少々奇妙だ。
普通は四角張っているのがビルというものだが、曲線やら三角やら不可思議な形状で構成されている。
いわゆる少し前のSF映画に出てくるような、いかにも未来都市といった感じのビル街の路上に彼ら兄弟の車はあったのだ。
「ここ……、どこなの? 日本?」
「日本にこんな奇妙な感じのビルあったかなあ?」
キイロ(中2)の疑問にコウジが返した。