224.洗車♪ 洗車♪
兄弟達は、車で出かけていた。
十人乗りの大きな車。
子どもは三人で大人二人換算だから、十人乗りの車で兄弟全員乗れるのである。
運転はツヨシ(大2)。
兄弟で運転免許を持っているのは三人だ。
19歳のツヨシと18歳のアオイ(大1)が自動車とオートバイの2つの免許を持ち、また、16歳のアカネ(高2)がオートバイの免許1つを持っている。
「ねえ、にーに、そろそろガソリン無いんじゃない?」
燃料計を見て隣の席のアオイがツヨシに言った。
確かに、メーターがEまであと2目盛りまで迫っていた。
「ちょうどあそこにスタンドがある。入れていこう」
ツヨシはいいタイミングで発見したガソリンスタンドに車を入れた。
休日のためか、スタンドも混んでおり、給油の順番がくるまでは少し待たなければならなかった。
「ねえ、車けっこう汚れてるよ」
タダシ(小1)が言えば、
「せっかくだからきれいにしてあげようよ」
とモモコ(小2)も応じる。
「そうだな。洗車機の方は混んでないようだし……、先に洗車をするか」
ツヨシは車を洗車機の方に回した。
洗車機にかけられている車の中にいるのは、ちょっとした遊園地のアトラクションのようだ。
ダイゴ(年中)やチャコ(年少)、タダシ(小1)、モモコ(小2)ら下の子たちは、高速回転するブラシを窓に顔をくっつけるようにして食い入るように見ていた。
洗車が終わり、拭き上げスペースに車を回す。
車を降り、十二人がかりでボディの水気の拭き取りにかかった。
「みんなでやると早いよなーー」
「十二人もいるからね」
ヒロシ(小4)やミドリ(小5)といった中くらいの背の者は車の中くらいの高さの場所を、モモコやタダシやチャコやダイゴもそれなりに自分の手の届く場所を、屋根などの高い場所はツヨシ・アオイ・アカネ・ハヤトら上の者たちがそれぞれ拭き取った。
「ピカピカになったーー」
「これで、さらに気分よく出かけられるわねーー」
コウジ(中1)もキイロ(中2)も、もちろん全員、充実感、達成感に満たされて車に乗り込み、スタンドを後にした。
ふと、アオイが隣の運転席のツヨシに言った。
「ねー、ガソリン入れたっけ?」