218.ここ俺んちだよ!?
高校からの帰り道。
ハヤト(高1)は前方の道の真ん中でしゃがみこんでいる少女を目にした。
齢は中学生ぐらいか。
「君、どうしたの? 大丈夫」
ハヤトもしゃがみこんで、少女に話しかけた。
「急におなかが痛くなっちゃって……」
苦しそうな表情で少女は答えた。
その顔を見て、ハヤトはどこかで見たことのある顔だと思った。
確かに見覚えのある顔だが……、誰だろう、よく知っている気がするのに、誰だか分からない。
読者の方々にはもうお分かりだろうが、これは女子中学生の姿になった、ハヤトの妹チャコである。
「救急車を呼ぼうか?」
もちろん、おなかが痛いというのはチャコの演技だ。
救急車を呼ぶわけにはいかない。
「いえ、そこまでは……、少し休んでいれば治ると思います。うちも直ぐ近くなので……」
「そうなの? もし、イヤじゃなかったら、君の家までおぶっていくけど?」
やった――と、チャコは思ったが顔には出さない。
「そんな……、ありがたいけど、ご迷惑じゃありませんか?」
「大丈夫だよ。困った時はお互い様」
ハヤトはそう言うと、チャコに背中を向けてしゃがんだ。
「さ、おぶさって」
「はい……」
チャコは、ハヤトにおぶさった。
ハヤトには今までも何度もおぶわれているが、自分の体が大きくなっている分、ハヤトの体のより多くの部分に自分の体が密着することになり、慣れない感触にチャコはくすぐったいような印象をもった。
「ごめんなさい、重くないですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
うちの兄弟たちは、みんな姉妹たちに優しいが、他の女の子にもこんな風に優しいんだな……チャコはちょっと複雑な気持ちだった。
「君のうちはどっち?」
「真っ直ぐ行って左です」
「そうか、俺のうちもこっちだよ」
「そうなんですか」
「次は……?」
「右です」
「偶然だね……、俺んちも右だ」
「……」
「今度は?」
「ここは、真っ直ぐです」
「近所だね。でも、今まで君のこと見かけたこと無かったなあ」
「あ、あの、ここの角から3軒目です」
「そうなの、ここの角から3軒目って……、ここ俺んちだよ!?」




