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217.近寄らないで!!

 友人のメグやヨーコと公園でのバスケットボールの練習を終え、ミドリ(小5)は家路を急いでいた。

 ふと、ミドリは、目の前の少年に気が付いた。

 齢は中学生ぐらい。

 紙を手に持ち、辺りをきょろきょろ見回している。

 誰かの家を探しているのだろうか。

 ミドリは少年の顔を見た。

 どこかで見たことがあるような顔だ。

 それもとても身近で。

 しかし、誰なのかどうしても思い出せない。

 そんなことを考えているミドリの近くに少年は近づいてくると声をかけた。

「こんにちは」

「あ、こ、こんにちは」

 少年を見上げてミドリは挨拶を返した。

 身長は……、コウジ(中1)よりは高く、ハヤト(高1)よりは低い感じだろうか。

 面影がコウジやハヤトに似ている気もする。

「実は、あるお宅を探していまして……、志武さんとおっしゃるのですが」

「え、志武ですって?」

 それなら私の家です――と言おうとしてミドリは押しとどまった。

 今の時代、やたらと個人情報を明かすのは危ない。

 ミドリが黙っていると、少年は言葉を続けた。

「志武さんというお宅、ご存知ありませんか?」

「そういうお宅は……、一軒知っていますけど……」

 ミドリは慎重に答えた。

「良かった……、実は僕、その御宅のハヤト君の知り合いで……、ちょっと用があってたずねてきたんだけど、迷ってしまって……。あの、良かったら案内していただけませんか?」

「そう……、ですね……、じゃあ、まあ……」

 あくまで警戒しつつ、ミドリは一緒に歩き始めた。

「あなたはお名前、なんて言うんですか?」

 少年はミドリに名前を聞いてきた。

 今時、知らない人に名前を教えないのは、どの小学生も家や学校で躾けられている。

 もちろんミドリも。

「すみません、知らない人に名前を教えるなと、うちや学校で言われていますので」

 ミドリはあくまで淡々と対応した。

(ねえね、ガードがかたいな……)

 この少年は――、そう、男子中学生の姿となったダイゴである。

 まだ事情を知らない兄姉たちに、外で他人の振りをして話しかけるいたずらをしているのだ。

 だが、ミドリの対応は、どうにもつれなかった。

 考えながらダイゴは角を曲がった。

 ふと、横を見るとミドリがいない。

 ミドリは角を曲がらず、手前で立ち止まっていた。

 ダイゴが後戻りする。

 ミドリが防犯ブザーを握り締め、険しい顔で立っていた。

「あなた、志武さんの家を知らないなんてウソね。今、私の案内がなくても正しい方向に曲がったもの! 一体何をたくらんでいるの?」

 こんなところで防犯ブザーを鳴らされ、「不審者です!」とでも大声を出されたら大ごとだ。

「あ、ごめん、ごめん、待って、ねえね」

 ミドリを止めようと、ダイゴは両手を伸ばして駆け寄った。

「近寄らないで!!」

「僕だよ、ダイゴだよ! ホラよく見て! これ、コウちゃんの服!」

「え……?」

 言われてミドリがよくよく見ると――、確かに少年が来ているのは中1の兄コウジの持っているのと同じ物だった。

 それに、自分を「ねえね」と呼ぶのは、5人の弟妹たちしかいないはず。

 ならば、この、自分より年長に見える少年は、本当に弟のダイゴなのだろうか――?

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