216.やってみたいことがあるな
「どうしたの?」
腕を交差させて服の裾を持ち、一気にまくり上げようとしているポーズのまま、女子中学生の姿になったチャコがコウジ(中1)にたずねた。
「その……、なんだ……、いつも見慣れている普段の兄弟ならともかく、何というか、今のチャコとダイゴは、初対面の同級生みたいで、目の前で着替えられるのは、ちょっと抵抗がある」
言いにくそうにコウジが言えば、
「確かに……。コウジだったら平気だけど、今のダイゴに目の前で着替えられたら、なんだか私も目のやり場に困っちゃう感じ」
キイロ(中2)も同調した。
「えー、じゃ、どーすんの?」
上はもう全部脱いでしまった、やはり男子中学生姿のダイゴが、パンツに手をかけてたずねる。
「僕らは部屋の外に出ているから、その間に着替えろ。あ、あと、チャコとダイゴも別々の部屋で着替えろよ」
コウジはそう言うと、キイロと部屋の外に出た。
「チャコちゃん、なんか、今さらという感じなんだけど……」
「でもダイゴ、一応ここはコウちゃんとアネキの言う通りにしておこう」
ダイゴとチャコは、一応別々の部屋で、それぞれコウジとキイロの服の着替えたのであった。
着てみて気付いたのだが、若干、コウジとキイロの服がキツい。
ダイゴもチャコも、コウジ、キイロより微妙に体格がいいようだ。
あらためて4人の中学生男女が一室に揃った。
背を比べてみる。
ダイゴはコウジより、チャコはキイロより、若干背が高かった。
ただし、ダイゴもチャコも、ハヤト(高1)やアカネ(高2)よりは背が低そうだったので、年齢的にも、コウジやキイロよりは上、ハヤトやアカネよりは下、といった辺りなのだろう。
ダイゴが13歳(中2)、チャコが14歳(中3)ぐらいか。
「チャコとダイゴは、ちょうど10年ぐらい大きくなったってところかな」
「でもこれ、どうしたらいいのかな? このまま中学生姿のままってわけにはいかないよね」
コウジは心配そうだ。
「コウちゃん、心配要らないよ」
心配げのキイロやコウジとは打って変わって、明るくチャコが言った。
「そうだよ。大きいままで困ったら、きっとまたそれを何とかするものが、『救われるボックス』の中から出てくるさ。そうしたら、それを使えばいいんだ」
ダイゴも楽天的だった。
「せっかく大きくなったんだから、やってみたいことがあるな」
「私も」
いたずらっぽい表情で、ダイゴとチャコは顔を見合わせた。