209.しゃべるリス
明け方。
布団の中に居たタダシ(小1)は、窓の外から光を感じた。
「なんだろう?」
庭に出たタダシは、1匹のリスが動かなくなっているのを見つけた。
近くにカゴも転がっている。
志武家の庭に、誰かが投げ込んでいったのだろうか?
タダシはリスを拾い上げた。
苦しそうな表情で震えていた。
「怪我をしているんだ」
志武家のリビングルーム。
兄弟姉妹たちが顔寄せ合って、小さい布団の上に寝かせたリスを覗き込んでいた。
「可哀そうに……。誰が投げ込んでいったのかしら」
「震えも収まったし、もう大丈夫だろ」
「でも、珍しいリスだよね。尾が二股に分かれてる」
「宇宙から来たリスだったりして」
「まさか」
「あ……、目を開けるぞ」
リスはゆっくり目を開けた。
たくさんの顔に覗き込まれていてリスはびっくりした様子だったが、立ち上がると、ぴょこりとお辞儀をした。
『みなさんが私をたすけてくれたんですね? ありがとうございます』
可愛らしい女の子の声が、兄弟たちに聞こえた。
「あれ、今の誰の声?」
「俺たち……、じゃないよな?」
顔を見合わせる兄弟たち。
『私ですよ、皆さん。皆さんの目の前に居ます。私が皆さんの頭の中に直接話しかけているんです』
「な、なんだってえぇぇぇぇぇ!?」
兄弟たちは驚愕した。