表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/340

206.シュートイン!

 6年生男子 対 4,5年生女子の、バスケットボールシュート対決。

 あちらは、ガンタ、ギンゾウ、ゴンスケの6年生男子3人。

 こちらは、メグ、ヨーコの4年生女子2人と、ミドリ(小5)の計3人だ。

 シュートは1回交替で行う。

 4,5年生側のトップはメグ。

 まずは1投目。

 見事に決まった。

「やったメグ!」

「いいぞ」

「すごいじゃない」

 ヨーコ、ヒロシ(小4)、ミドリが歓声を上げる。

「へん、見てろ」

 6年生側のトップはゴンスケ。

 シュートは――、外れた。

 しらーっとなる6年生3人。

 メグの2投目は……、残念ながら外れた。

 逆にゴンスケは決めた。

 これで1対1。

 メグの3投目が再び決まった。

 ゴンスケは外れ。

 1人目は、2対1で、4,5年生側のリードだ。

 続く2人目は、ヨーコとギンゾウ。

 こちらは、ヨーコが1本、ギンゾウが2本決め、トータルスコアは3対3の同点となった。

 3人目は、ミドリとガンタ。

 ボールを何回か弾ませ、顔の前で構えると、ミドリはボールを放った。

「つ……っ!」

 その時、ミドリの手首に痛みが走った。

 ボールはボードにすら当たらず、大きく反れた。

 手首を押さえるミドリ。

「ねえね、大丈夫か?」

 ヒロシがミドリに駆け寄る。

「なんだ、なんだ、大外れだな。5年のくせに、4年より下手なんじゃねーの」

 ガンタがまたも憎まれ口をたたく。

 ただ、ガンタは口だけではなかった。

 きっちりシュートも決めたのだ。

 これで3対4で、6年生側のリードとなった。

 ミドリ、2投目の番だ。

「ねえね、投げられる?」

「うーん……。ごめん、無理かも」

 ヒロシの気遣いに、ミドリは正直に答えた。

 ここで強がっても仕方が無い。

「あれあれ、棄権ですかあ? んじゃあ、ここは俺たちの勝ちってことで……」

「待ってくれよ」

 ガンタをヒロシが制した。

「先輩たち、俺が姉ちゃんの代わりをやってもいいか?」

 それまでシュート対決の傍観者だったヒロシが、転んで手首を痛めたミドリの代わりを申し出た。

 ガンタは、ギンゾウ、ゴンスケらと顔を見合わせた後、答えた。

「別にかまわねえぜ。ただ、オマエ、バスケは素人だろ? シュートできんのかよ」

「確かに俺はバスケは素人だ。だから……」

「だから?」

「足でやらせてほしい」

「足でだと?」

 ガンタ、ギンゾウ、ゴンスケは笑い出した。

「手が使えないから、足でシュートするぅ?」

「オマエ、バカじゃねーの。足で入れるほうが数倍むずかしいだろ!」

「まあ別にこっちは、足使おうが尻使おうが構わねーけどよ」

 ヒロシは、バスケットボールを膝や爪先でリフティングし始めた。

「じゃあ、オッケーって事だな?」

「別に構わねーぜ」

 ガンタは腕を組んでニヤニヤしていた。

「じゃ……、いくぜ!」

 ヒロシは、ボールを、右足の内側でポーンと高く蹴り上げた。

 ボールはゆるやかな放物線を描き……。

 スポッ、と、見事にバスケットボールのカゴの中におさまった。

「入った!」

「志武君、すごい!!」

 メグとヨーコが目を丸くする。

 合計数が4対4となり、再び同点となった。

「く……」

 足で入れることをバカにしていたのに、見事ゴールを決められた悔しさにガンタの顔が歪んだ。

「けっ、見てろ!」

 2、3回、ボールを弾ませた後、ガンタはシュートを放った。

 しかし、ボールはリングに当たり、外れてしまった。

「しまった……」

 スコアは4対4のままである。

 ヒロシが再び、足でボールのリフティングを始めた。

 そして、先ほどと同じ要領で蹴り上げた。

 今度も見事にボールはリングを通り抜けた。

「やったーー!」

「これで悪くても引き分けだわ!」

 手を取り合ってはしゃぐメグとヨーコ。

「お、おい……、ガンタ」

「大丈夫かよ」

 ギンゾウとゴンスケが、不安げにガンタを見た。

「バ、バカヤロウ……。大丈夫に決まってんだろ! 見てろ」

 ガンタはボールを構えて狙いを定め、最後のシュートを放った。

 ボールはリングに当たり、上に跳ねた。

 入るか……?

 ボールはリングの反対側で再び跳ねると中を通る事無く落下した。

 4、5年生チームの勝ちである。

「外れた!!」

「勝ったわーー」

 飛び上がるメグとヨーコ。

「く……、認めねえ……」

 ガンタがつぶやいた。

「認めねえぞ! 足でやるのなんかルール違反だ! バスケは手でやるって決まってんだ!!」

「そ、そーだ、そーだ」

「ルール違反だ。こっちの勝ちだ」

 ガンタに同調し、ギンゾウとゴンスケも吠えた。

「最初は認めておきながら、今更何言ってんのよ!」

「そうよ、負けたからって! みっともない」

 メグとヨーコも負けてはいなかったが――

「ねえね、大丈夫か?」

 ヒロシの声で、メグとヨーコは、志武姉弟に目を向けた。

 手首を押さえているミドリをヒロシが気遣っている。

「2人とも悪いけど、俺たち帰るわ。姉ちゃん、手首痛そうだし、もしかしたら病院いかなきゃいけないかもしれないから……」

 ヒロシがメグとヨーコに言った。

「あ……、うん、そうだよね」

「私たちも、帰る。暑くなってきたしね」

 ヒロシの言葉を受け、メグとヨーコも帰り支度を始めた。

「おいおい、何だ? 勝ち逃げか? ま、どうせケンカじゃ俺たちにかなわねえだろーからな」

 帰ろうとする4人の背中にガンタが大声をぶつけた。

「なんだよ先輩たち。ここを使うのは譲るんだから、もういいだろ。俺たちもう帰るし、こっちの負けで構わないぜ」

「そうよね、もう勝負なんてどうだっていい」

「ああ、やだやだ。負け犬の遠吠えって感じでサイテー」

 ヒロシの言葉にメグとヨーコも同調した。

「く……、下級生のくせに生意気なんだよ!」

 言われた腹いせに、ガンタは持っていたボールを思いっきり、メグとヨーコに向かって投げつけた。

「きゃっ」

「あぶな……」

 ヒロシがその前に立ちはだかった。

 そして、オーバーヘッドキックで、ボールを高く蹴り上げた。

 ボールは、高く高く上がった。

 そして放物線を描いて、先ほどシュート勝負をしていたバスケットゴールへ。

 ボールは、スポッと挟まった。

 リングとボードの間に。

「先輩、いいのかよ、そういう事して。先生に言いつけちゃうぜ」

「きゃー、志武君、器用!」

「かっこいいーー」

 メグとヨーコが、両手を胸の前で組んで歓声を上げた。

「行こうぜ」

 ヒロシ、ミドリ、メグ、ヨーコの4人は立ち去った。


「ガンタぁーー、アレ、どーすんだよーー」

「く、くそー、外れねーー」

 後に残された、ガンタ、ギンゾウ、ゴンスケの3人は、棒切れでつついて、リングとボードの間にはさまったボールを必死に外そうとしたが、がっちりはまっていてちっとも外れないのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ