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204.衝撃! シャドリンズ

 ネットアイドル「シブリンズ」のコンサート会場。

 そこに突然、“彼ら”は現れた。

 シブリンズの5人が歌っていると、突然、舞台が薄暗くなり、曲はフェイドアウト。

 何事が起こったのかと、周囲を見回す、パンク(ハヤト)、らんぷ(キイロ)、キック(ヒロシ)、おんぷ(モモコ)、じゃんぷ(チャコ)の5人。

 彼らの背後に、いつの間にか5つの影が忍び寄っていた。

 舞台下手(向かって左側)に固まるシブリンズ5人。

 影5人は、上手(向かって右側)に並び立った。

「何者だ!?」

 パンク(ハヤト)が叫んだ。

「フッフッフッ……。我々はシブリンズの影」

 影の1人が答える。

「影ですって?」

 らんぷ(キイロ)が、体中のLEDランプを点灯させて、5つの影に照射した。

「ああ!?」

 驚愕の声を上げるシブリンズ5人。

 LEDランプの光の中に浮かび上がったのは、正に「黒いシブリンズ」とでも言うべき扮装をした5人だったのだ。

 シブリンズ同様、目元はマスクで覆い隠されていた。

 シブリンズが男2人女3人の構成なのに対し、こちらの5人は男3人女2人の構成であることが服装から見て取れた。

「我々はシブリンズの影。名付けててシャドーシブリンズ『シャドリンズ』だ!!」

 先ほどとは別の1人がそう名乗った。

「何がシャドリンズだ、偽者め!」

 キック(ヒロシ)が、背中に常備のボールを取り出し、シャドリンズに向かってシュートした。

 シャドリンズの1人――髪の長い女性――が、そのボールをバレーボールのレシーブの要領で受け、高く上げた。

 更に別の1人、ショートカットの少女がそのボールをキャッチすると、突然、バスケットボールのドリブルをしながら、キックに急接近。

「な、なんだ!?」

 あまりの事にのけぞるキック。

 少女は、ひょいとボールを下手投げした。

 バスケットボールのレイアップシュートだ。

 ボールは、キック(ヒロシ)の頭上で放物線を描き、その背中のボール収納ギミックに収まった。

「おおおおおーーっ!?」

 観客席がどよめく。

「キック! 私はあなたの影の、志武ぱんちよ」

 たった今シュートを決めた少女は、志武ぱんちと名乗った。

「では、私たちも名乗るとしましょうか」

 さきほど、キック(ヒロシ)のボールをレシーブした髪の長い女性がパンク(ハヤト)を指差した。

「パンク! 私はあなたの影の、志武ぽっぷ!」

 「反体制」を意味するパンクに対し、「大衆」を意味する「ポピュラー」から取っての「ぽっぷ」なのだろう。

 次に、志武ぽっぷと志武ぱんちの中間ぐらいの身長の少年が、らんぷ(キイロ)を指差した。

「らんぷ! 僕は君の影の、志武ショートだ!」

 志武ショートと名乗った少年がそう言うやいなや、舞台も、志武らんぷのLEDランプも、何もかもが消え、一瞬会場全体が真の闇となった。

 会場がざわつく。

 ほどなく照明は復旧した。

「分かったかい? 『らんぷ』の君に対して、僕は闇。志武ショートとは、『消灯』という意味なのさ。それともう1つ――」

 ショートは、ポケットから小さいボールを取り出すと、シブリンズ側に向かい、野球選手を思わせるフォームで投げた。

 パンク(ハヤト)がショートの投げたボールをキャッチした。

「僕は野球をやっててね。ポジションは、ショート」

 投げ終えたポーズのままショートが言葉を続けた。

 続いて、小柄な少年が、おんぷ(モモコ)を指差して叫んだ。

「おんぷ! 僕は君の影の志武キューフだ」

 キューフと名乗った少年は、そう言うと横になった。

「……」

 何が起きるのだろうと、シブリンズも会場の観客達もしばし見守る。

 数秒後、キューフはむくっと上体を起こした。

「分かったかい? 四分音符の君に対して、僕は四分休符なのさ。一休み、一休み」

 シブリンズの5人はずっこけた。

「あれ? そういえば、シャドリンズ、5人じゃなかったのか?」

 パンク(ハヤト)が言えば、

「本当だ。いつの間にか4人になってる」

らんぷ(キイロ)も、シャドリンズのメンバーを何度も指差し数える。

「あと、1人はどこへ……」

 おんぷ(モモコ)が言いかけると――。

 ステージ中央から、シャドリンズ最後の1人の男の子がせり上がってきた。

 どうみても、3歳ぐらいの幼児だ。

「じゃんぷ! 僕は君の影の、志武マリンだ」

 志武マリンと名乗った男の子が、じゃんぷ(チャコ)を指差し叫んだ。

「志武マリンですって? どういう意味なの」

 じゃんぷ(チャコ)が返す。

「『跳ぶ』を意味する『ジャンプ』に対し、僕は『もぐる』を意味する『志武マリン』!」

「……」

 一瞬静かになる一同。

「それはつまり……、潜水艦のサブマリンと志武マリンをかけているのか?」

「だから、地下から登場したの?」

「よく分からないけど、そうだ!」

 パンク(ハヤト)とらんぷ(キイロ)からの問いに対し、胸を張って堂々と志武マリンは答えた。

「マリン、こっちへいらっしゃい」

 志武ぱんちがしゃがんで、志武マリンを呼んだ。

「ねえねーー」

 志武マリンはトコトコと走って、志武ぱんちの胸に飛び込んだ。

 影とか、シャドーとか言ってる割には、結構ラブリーな雰囲気を醸し出しているシャドリンズだった。

「と、とにかく、シャドリンズとやら。ここは、俺たちシブリンズのステージなんだ。邪魔はしないで、引っ込んでてもらおうか」

「そうよ。私たちは次の曲にいくんだから、邪魔しないでちょうだい」

 パンク(ハヤト)とらんぷ(キイロ)が言うと、次の曲のイントロがスタートした。

「それでは次の曲、聴いてください! 『シャイニングダークネス』!!」

 おんぷ(モモコ)が叫び、シブリンズ5人が踊りだす。

――と、シャドリンズは、シブリンズ背後の一段高くなっている場所に並び立ち、曲に合わせて振り付けを開始した。

 そのダンスは、シブリンズの動きと正反対、表裏一体となった振り付けだった。

 シブリンズが右を向けば、シャドリンズは左。

 シブリンズが右足を上げれば、シャドリンズは左足を上げる。、

 シブリンズが跳べば、シャドリンズはかがむ。

――というように。

 そして歌。

 シブリンズの歌を高音部とすれば、シャドリンズの歌は低音部といえるメロディーラインになっているのだ。

 歌も踊りも、真逆でありながら一体感があり、全体の完成度を高めていた。

 そのボルテージに観客は熱狂し、会場が揺れた。


「シブリンズのライバル『シャドリンズ』登場! その正体は!?」

 翌日のスポーツ新聞芸能欄には、このような見出しが載った。

「どうやら、シャドリンズの登場、成功だったようじゃないか」

 新聞を置き、朝食のコーヒーを飲みながら、ツヨシ(大2)が言った。

 志武兄弟姉妹12人が朝食のテーブルを囲んでいる。

「このあいだフューチャー3と競演した事をきっかけに、シブリンズにライバルを登場させる事を思いついた(第179話)のよね、コウジ?」

「うん、アオ姉。シブリンズにライバルが出て競い合ったら面白いんじゃないかと思ってさ。これからは、兄弟姉妹総力体制でネットアイドルをやっていくよ」

 そう。

 実はシャドリンズの正体もまた、志武兄弟姉妹だったのである。

 志武ぽっぷ は、アカネ(高2)。

 志武ショート は、コウジ(中1)。

 志武ぱんち は、ミドリ(小5)。

 志武キューフ は、タダシ(小1)。

 志武マリン は、ダイゴ(年少)。

「にーにと、アオ姉も、今度出てよね」

「しかしな、コウジ……。俺はマンガの仕事もあるから、そう頻繁には出られないぞ」

「私も、にーにの手伝いや、家の仕事があるし……」

「分かってるよ、にーに、アオ姉。仕事は兄弟みんなでちゃんと分担しよう。だから、時々は頼むよ、ね!?」

「にーに、アオ姉、やろーよー」

「みんな一緒なのが、いい」

 コウジの言葉に、チャコ(年中)やダイゴ(年少)も同調した。

「そうだな……。まあ、やれる範囲で頑張るとするか。ところでみんな、そろそろ急がないと遅刻する時間だぞ!」

 ツヨシが部屋の時計を指差した。

「いけない、いけない」

「芸能活動と日常生活をちゃんと両立させなくちゃ!」

 兄弟姉妹たちは、慌しく朝食を平らげ、それぞれの支度に取り掛かった。

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