表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/340

201.ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムシの帰還

 別室では、ヒロシ(小4)が夏休みの工作、サッカーボール型びっくり箱の仕上げに取り掛かっていた。

 ふたを開けた状態で、ヒロシが目を離しているところに、ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムシが飛んできて、箱の中に入った。

 気付かずにふたを閉めるヒロシ。

「うん、なかなかいい出来だ。後は、この中から、びっくりする何かが飛び出すようにすれば……」

 言いながらヒロシはふたを開けた。


 ぶ~~ん……。


 ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムシが飛んできて、ヒロシの額に止まった。

「ねえ、ヒロシ、ここにさ、黒い虫来なかった?」

 アオイ(大1)、ツヨシ(大2)、キイロ(中2)、チャコ(年中)、ダイゴ(年少)がやって来た。

 先ほど立ったまま気を失ったタダシ(小1)は、リビングに寝かせてきたのだ。

 ヒロシが、工作中のびっくり箱を前に、こちらに背中を向けて座っている。

「あ、もうだいぶできたじゃない?」

 素肌に超々ミニスカートひめっこズキュンコスプレ状態のキイロが、ヒロシの前に回って、作りかけのびっくり箱を見た。

「ね、ヒロシ?」

 ヒロシの顔を見るキイロ。

 その額にはガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムシ。

 そして、当のヒロシは白目をむいたまま微動だにせず。

「いたーーーーーーーーー!!」

 キイロが叫んだ。

「とお!」

 虫取り網を持っていたダイゴが、ヒロシの頭に振り下ろす。

 だが、タッチの差で、ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムシは、またもテイクオフ。

「あっちだ!」

「追えーー!」

 部屋を出て行くツヨシ、アオイ、キイロ、チャコ、ダイゴ。

 虫取り網を頭にかぶせられたまま気を失ったヒロシを残して。


「ただいまー」

「お昼のパン買ってきたわよー」

 玄関にアカネ(高2)とミドリ(小5)が帰ってきた。

 兄弟たちの昼食にパンを買いに行っていたのだ。

 靴を脱いでいる2人の前に――。


 ぶ~~ん……。


 ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムシが飛んできた。

「な! ミドリ、これは?」

「アカ姉、ゴキブリじゃない!?」

 勘違いしたアカネとミドリが、飛んできた黒い虫を叩き落とさんと、たった今脱いだばかりの靴を構えた。

 そこへ、ツヨシ、アオイ、キイロ、チャコ、ダイゴが駆けつけてきた。

「よ、よせーー」

 右手を伸ばしてツヨシが叫ぶ。

「アカネ、ミドリ、それはゴキブリじゃないわ! 捕まえて!」

「「え?」」

 アオイの叫びに、靴を構えていたアカネとミドリの動きが止まった。

 その間隙を縫って、開け放してあった玄関扉から、ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムが、ぶぶーんと外へ出て行ってしまった。

「やばい! じゅーすーまんえんが!!」

 焦るキイロ。

 その時。

 すぽっ。

 ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムが虫捕り網に収まった。

「珍しい虫、捕まえたーー。なんか、やたらツノが多いなあ? 珍種のカブトムシ?」

 近所に虫捕りに出かけていたモモコ(小2)が帰ってきたのであった。

「モ……」

「モ……」

 モモコの周囲に集まる兄弟たち。

「あれ、みんなどうしたの?」

「でかしたぞお、モモコーー!!」

 その場の兄弟たちみんなでモモコを胴上げした。

「?」

 宙を舞いながら、モモコは意味が分からない。


 昼食のパンを食べながら、12兄弟姉妹はテーブルを囲んでいた。

「全く、Gかと思ってほんとに焦ったよ」

 鼻をこすりながらコウジが言えば、

「ほんと。びっくり箱の中から飛んできた時は、マジ焦ったぜ」

と、ヒロシも額を押さえる。

「みんな、どんな時にも冷静さを失っちゃいけないぞ」

 長男らしくツヨシがしめた。

「あれ? にーにの肩に、今、黒い虫が居なかった?」

 ツヨシの肩に黒い虫がいて、背中に移動したのがダイゴに見えた気がしたのだ。

「また、そのガイ……なんとかが逃げ出したんじゃ!?」

 チャコが言うが、

「いや、あまぞんは、飼育ケースの中にいるよ」

 ダイゴの言う通り、ガイチューラ・ミノタウロス・アマゾン・オオカブト・クワガタムは飼育ケースの中でおとなしくエサを食べていた。

「――と、いうことは?」

 ツヨシの背中を覗き込むアオイ。

「あの、にーに……、落ち着いて聞いてね」

「なんだアオイ? まさか……」

「その……、まさかです」

「!」

 ツヨシは顔面蒼白になって固まった。

「どわわわあああああああっっ!!」」

 弟たち5人は、即行で室外退避。

「そっちへ行った!」

「おのれ、逃がすか!!」

 姉妹6人で、今度は本当のG捕り物が始まったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ