193.12兄弟絵皿
小学校の夏休みの宿題。
ミドリ(小5)は、近所の風景画を描いた。
ヒロシ(小4)は、サッカーボール型のびっくり箱を作ることにした。
モモコ(小2)は、裁縫で人形を作ることにした。
「タダシはどうするの?」
風呂で頭を洗ってやりながら、ミドリがたずねた。
「う~ん、紙粘土で何か作ろうかな……」
「紙粘土ねえ……」
ミドリは思った。
プロマンガ家ツヨシ(大2)の弟だけあって、タダシ(小1)もダイゴ(年少)も、絵はそれなりに描ける。
だが、立体作品となると……。
先日のダイゴの幼稚園でのエピソード(第71話)は、ミドリもツヨシから聞いていた。
「ねえねの顔を作ろうかな……」
シャワーをかけられるのに備え、耳をふさぎながらタダシ。
「え、私の顔?」
タダシに頭からシャワーをかけてやりながらミドリ。
ミドリは、どんなのが出来上がるのか想像した。
(違うのにした方がいい!)
「――で、でもタダシ! 兄弟12人いるのに、私の顔だけっていうと不公平じゃない?」
「じゃあ、自分の顔にする」
「いや、う~~ん……」
シャワーでタダシの頭の泡を流し終え、タオルで軽く拭いてやりながらミドリは考える。
2人で一緒に湯船に浸かった。
洗面器がミドリの目にとまった。
洗面器からミドリが連想した物があった。
「あ、そうだ。お皿は?」
「お皿?」
「紙粘土でお皿を作るの。人間の顔より簡単だよ」
「そうか……。お皿なら割と簡単そうだね」
「でさ、さっきの顔を作る話だけど、そのお皿に私たち兄弟12人の顔を描いてみたらどうかな? 絵なら得意でしょ」
「あ、いいね……。うん、そうするよ!」
「お皿作るのは一緒に手伝ってあげるから」
「ありがと、ねえね!」
「どわっ、溺れるう」
喜んだタダシが急にミドリの首に抱き付いたてきたので、ミドリは危うくドボンと沈みそうになった。