190.宿題のアイディアのお礼
ダンス練習で汗をかいたヒロシ(小4)とモモコ(小2)は、同じく汗だくで部活から帰ってきたキイロ(中2)と一緒に入浴していた。
「ねえ、アネキ。夏休みの宿題で、何かいいアイディア無いかな?」
キイロの背中を流してやりながらモモコが聞いた。
「そうねえ……。どんなの作りたいの?」
「う~ん、なんか、こう、可愛いやつ」
「じゃあ、お人形なんかは?」
「お人形?」
「フェルトか何かでさ」
「でも私、裁縫とかやった事ないし……」
「大丈夫。一緒に作ってあげるから」
「ほんと? アネキ、裁縫得意だもんね。やったー」
「いたたたた」
「あ、ごめーーん」
嬉しさのあまり、背中をこするモモコの手に、つい力が入り過ぎた。
「アネキ、アネキ。俺にも何かヒントちょーだい」
湯に浸かっているヒロシが、キイロにねだる。
「ヒロシは、どんなの作りたいのよ?」
「どんなのって……。そうだなあ。見た人がびっくりするようなのがいいなあ」
「びっくりねえ……、じゃあ、そのまんま、びっくり箱とかは?」
「びっくり箱か。うん、いいかも」
「じゃあ、ただのびっくり箱じゃなくてさ、ヒロシ、サッカーやってるから、サッカーボール型のびっくり箱なんか、凝ってていいんじゃない?」
「ああ、いいねえ。――でも、工作でサッカーボール作るの大変なんじゃないの?」
「大丈夫だよ、正二十面体の展開図から、それぞれの三角形の周りを切り落として、五角形と六角形にしていけばいいんだから」
「せいにじゅうめんたい……。さっぱり分からない!」
「んじゃあ、ヒロシのも一緒にやったげる」
「ありがとう、アネさま!」
「なんか、アネゴとか、アネさまとか言われると、どんどん私のキャラが変わっていく気がするんだけど……」
「お礼にきれいにさせていただきます」
ヒロシはお湯から出ると、スポンジにボディソープを付けて、キイロの腕を洗い始めた。
「いいよ、いいよ。気ぃ、遣わなくて……。でも、なんか2人がかりで洗ってもらうと、ちょっと偉くなった気分かも」
「じゃあ、私、体もやってあげるね」
「俺は足も」
「そう、じゃあ、遠慮なく……って、ちょっ、そこは……、くすぐっ……、ぎゃはははは!」
浴室から大騒ぎが聞こえてきたので、何事かと思ったツヨシ(大2)が扉を開けて顔を出した。
3人とも泡まみれ。
キイロは、笑い過ぎてひくひくしていた。
「3人で何やってんだ?」