184.いっしょに遊ぼ
夕方。
コウジ(中1)は、チャコ(年中)とダイゴ(年少)を連れて散歩に出た。
公園に来た。
ヒグラシが鳴いており、辺りも涼しくなってきている。
砂場で遊んでいる弟妹2人を、ベンチに座ってコウジは見ていた。
「あら、こんにちは。確か……」
幼稚園くらいの女の子を連れた若い母親にコウジは声をかけられた。
コウジはその母親に見覚えがあったが、どこで会った人だったろうか――?
「チャコちゃん・ダイゴちゃんのお兄さんですよね? 以前、銭湯でお会いした」
「あーー」
コウジは思い出した。
以前、ダイゴが女湯で会った、同じ幼稚園に通う女の子のお母さんだ(第18話)。
スーパー銭湯の休憩室で会釈を交わしていた。
「どうも、うちの弟妹がお世話になっています」
コウジは立ち上がって挨拶をした。
「いえ、こちらこそ。ほら、アンナ、ご挨拶は?」
母親の陰に隠れていた女の子がぴょこっと顔を出し、促されて頭を下げた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは。前も会ったんだったね」
コウジはしゃがんでアンナの頭をなでた。
「あ、アンナちゃんだーー」
砂場からチャコとダイゴが走ってきた。
「アンナちゃん、どうしたの?」
「チャコちゃん、ダイゴ君、あのね、ママとお買い物の帰り」
アンナの母親が買い物のビニール袋を腕に提げていた。
「アンナちゃんも一緒に遊ぼうよ」
「え……、でも……」
アンナが母親を見上げる。
「あ……、そうねえ。直ぐ冷蔵庫に入れなきゃいけない物もあるから、ちょっと遊んでいくのは無理かな……」
アンナの母親が買い物袋を見た。
アンナががっかりした顔をする。
「あの、良かったら、僕いっしょに見てますよ。帰りもお宅までアンナちゃん送っていきます」
「そんな……、いいんですか?」
「ええ。2人見るのも3人見るのも一緒ですから」
「じゃあ、ちょっとだけお願いしようかしら。――ええっと」
「僕、志武コウジです」
「コウジさん、ありがとう。じゃ、アンナ。コウジさんの言う事ちゃんと聞いてね」
アンナはこくんとうなずいた。