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172.記憶の糸

 フューチャー3――かつて、ショッピングモールでのステージイベントで、観客席に居たモモコ(小2)とチャコ(年中)がその振り付けを完コピして踊ってしまったアイドルグループである(第82~84話)。

 周囲の観客から、フューチャー3よりも注目を浴びてしまい、その様子は動画サイトにもアップされた。

 背中からの動画だったので顔バレはしなかったが、以後そういったことは控えるように兄姉たちから釘を刺されていたモモコとチャコ。

 想定外の再会だった。

 もっとも、志武兄弟はショッピングモールでのフューチャー3との一件を覚えていたが、フューチャー3がそれを覚えていたかどうかは分からない。

「あ、こ、こんにちは。じゃ、なくって、えーと、おはようございます」

 キイロ(中2)が芸能界流の挨拶をした。

(可愛い人たちだなーー。さすがアイドル)

 フューチャー3の3人を間近で見てキイロは思った。

 フューチャー3は、パル(17歳)、ピノ(16歳)、ポロ(15歳)の3人で構成されている。

 パープルの衣装を着て髪をロングにしているのがリーダーのパル。

 イエローの衣装を着たショートカットで活発そうな感じなのがピノ。

 そして、ピンクの衣装でミドルヘア、おとなしそうな印象を受けるのが最年少のポロ。

 現役高校生アイドルだ。

「おはようございます。えっと確か……」

 パルが言いかけたのをキイロが引き取って答えた。

「シブリンズです」

「そうそう、シブリンズ。今日は録画撮り一緒なのよね、よろしく」

 パルが右手を出した。

「こちらこそ」

 キイロが応じた。

「あなたたち、どうして顔を隠しているの? 見た感じ、目もぱっちりしていて可愛いと思うんだけど……」

 パルがたずねる。

「えっと、まあ……、いろいろあって」

 もともと動画サイトへの歌やダンスの投稿が高じてここまでになったわけで、最初からアイドルや芸能人を目指していたわけではない。

 顔を隠しているのも一般人としての暮らしを守るためだ。

 だが、キイロにはそんなことを長々説明する気も無かった。

「アネキ」

 小声でモモコ(小2)がキイロをつついた。

「もれちゃう」

「あたしも」

 チャコもキイロを見上げて小声で言う。

「す、すみません。ちょっと急ぐので」

 キイロはチャコを連れてあわただしく個室に入った。

 衣装の着脱を手伝うためだ。

 モモコは1人で入った。

「あの子たち……」

「どうしたのピノ?」

 ピノがパルに言った。

「どこかで会った気がする」

「そりゃそうでしょ。さっきは直ぐ名前が出てこなかったけど、シブリンズは、私たちだって動画サイトで前に見たことがあったじゃない」

 パルはそう言ったが、ポロもピノの言葉に同調した。

「私も……、どこかで……、あの子たちに会ったような」

「えーー、そうかな?」

 パルは記憶の糸をたぐった。

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