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157.わたあめん
近所の公園で町内会の祭りが開かれた。
志武兄弟12人も、さっそく出かけた。
「あ、『わたあめん』だーー」
「『わたあめん』買ってーー」
チャコ(年中)とダイゴ(年少)が兄姉たちにねだる。
「わたあめん」とは綿飴のことだ。
志武家の下の子たちは、綿飴に「ん」を付けて「わたあめん」と呼ぶ。
「『わたあめん』な……。『わたあめん』食べる人ーー?」
ツヨシが弟妹たちに問いかけると――。
手が11本上がった。
綿飴屋の前には結構人が並んでいる。
しばし並んで、ようやく志武家の番になった。
「えーー、『わたあめん』――じゃなくて、綿飴12個ください」
12個という注文に、綿飴屋の親父さんはちょっと驚いた様子だったが、
「へい、ちょっと待っててね」
と、慣れた手付きでたちまち12個の綿飴を作ってくれた。
「兄さんも食べるの? 『わたあめん』」
11本目の綿飴を受け取りながら、アオイ(大1)がからかうように聞く。
大きくてゴツい体つきのツヨシには綿飴はちょっと不似合いな感じだ。
12本目の綿飴を受け取り、ツヨシが返した。
「キュートな俺にぴったりだろ?」