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156.かる
休日のショッピングモールは混んでいる。
駐車場の空きを探すのも一苦労だ。
空きスペースを示すグリーンのランプを探しながら、弟妹たちを乗せたワンボックスカーを走らせるツヨシ(大2)。
「あ、緑のランプがあったよ」
モモコ(小2)が指差した。
そこを目指して車を走らせるも――。
「ざんねん、『かる』かーー」
駐車スペースの路面には「軽」と記されていた。
軽自動車用の小さいスペースだ。
志武家の10人乗りワンボックスカーは止められない。
「じゃあ、『かる』じゃないとこ、探さないとな」
ハンドルを回すツヨシ。
幼い弟妹たちの誰かが『軽』を「かる」と読んで以来、志武家では軽自動車用駐車スペースを「かる」と称するようになったのだった。