153.左手マウス
「あれ、コウジ、左利きだっけ?」
学校でのパソコンでの授業中。
コウジ(中1)がマウスをキーボードの左側に置いているのを見て、同級生のシュウトが聞いてきた。
「いや、右利きだよ」
志武兄弟は全員右利きだ。
「じゃ、なんでコウジ、マウス左に置いてんの?」
「左手でマウス使うからだよ」
「へえ、左手で?」
兄弟の1番目であるツヨシ(大2)がパソコンを使い始めた時、マウスを左手で扱った。
右手でペンを持ってメモを取ったり、テンキー操作をしたりするのに便利だからだ。
弟妹たちは全員ツヨシに倣い、右利きであるにも関わらず、マウスは左手で扱うのである。
ちなみに、電卓も志武兄弟は全員左手で扱う。
右手でメモを取りながら計算できて便利だからだ。
「じゃあ、いいことずくめだな?」
シュウトが感心した。
「まあな。ただ、電卓の時は左手で計算し、キーボードのテンキーの時は右手で計算だから、そこだけちょっとややこしいかな。ま、うちの兄弟はみんなこうだけど」
「兄弟みんな? じゃあ、キイロさんもか?」
「そうだけど……?」
それを聞くと、シュウトは自分の使っていたマウスをキーボードの左側に持ってきた。
「シュウト、何すんだ?」
「俺も今から左手でマウス使うことにする。そうすりゃ、キイロさんとおそろいだ」
「やめてくれ、その前に、今この場で俺とおそろいになってしまっている」