151.扇風機伝説
熱帯夜。
「暑くて寝られないねーー」
「クーラー入れっぱなしだと風邪引いちゃうし……」
「服脱いで寝ちゃおーっと!」
「私もー」
タダシ(小1)とモモコ(小2)が服を脱ぎ始めた。
「私もそうするー」
「僕もー」
チャコ(年中)とダイゴ(年少)が直ぐ兄姉の真似をする。
「扇風機もつけて寝ようか」
「あ、でも扇風機つけたまま寝ると死んじゃうって聞いたことあるけど、本当なのかな?」
モモコの言葉にタダシが疑問を口にする。
「それ、私も聞いたことあるけど……、それ聞いちゃうと、まさか実験してみるわけにはいかないわよね」
モモコも少々不安な様子だ。
「それは大丈夫よ」
部屋にやって来たアカネ(高2)が言った。
「前、理科の先生に聞いたけど……。そういうことはないって。ただ、体が冷えて体調をくずしたり、もともと体調の良くない人が更に体調を悪くしたりといったことはあるみたい。それが大げさに世の中に広まったんだろうだって」
「そういえば、前、『人間は皮膚呼吸をしていない』っていう話(第48話)を聞いたことがあったけど……、そういう都市伝説というか、デマみたいなものって、結構あるんだね」
アカネの後ろからコウジ(中1)も顔を出す。
「そうよ。だって、扇風機つけたままうとうと居眠りしちゃう人なんかいっぱいいるだろうし……。それが本当なら、世界のあちこちでそういう事故が起きてることになっちゃうわ」
「じゃ、クーラーつけたまま寝ても平気かな」
アカネの言葉にタダシが目を輝かせる。
「体が冷えたり、のどをやられちゃったりするのは本当だから、クーラー一晩中つけっぱなしなのはダメだけど……」
「だけど?」
「みんなが寝た頃、クーラー止めて窓開けてあげるから、今日はいいわよ」
「わーい、やったー」
4人の弟妹たちは、うれしさでうきうきしながら布団に横になった。
それを見てアカネが言った。
「でも風邪引いちゃうといけないから、下着くらい着けて寝よっか」




