129.激走! カメンダー姉弟
アカネ(高2)とハヤト(高1)は、今日もカメンダーマスクショーのアルバイトに来ていた。
アカネはカメンダーレディ、ハヤトは戦闘員だ。
ショーが終わり、サイン会、握手会となった。
ファンの子どもたちに応じるのは、カメンダーマスクとカメンダーレディの2人。
戦闘員たちは、列の誘導だ。
「きゃああああ」
――と、列の一か所から悲鳴が上がった。
人々が、声のした方を見る。
若い男がハンドバックを持って走っていくのが見えた。
「ひ、引ったくり~~!」
並んでいた若い母親が、肩にかけていたバッグを引ったくられたのであった。
「待てーー!」
戦闘員のスタイルのまま、ハヤトが走り出していた。
男は、遊園地の外に出ると、待たせていたオートバイにまたがった。
2人組の計画的な犯行だ。
オートバイは走り去った。
「おのれ……」
ハヤトは歯がみした。
いくらハヤトがスポーツ万能でも、オートバイには追いつけない。
その時、後ろから声がした。
「ハヤト、乗って!」
アカネだった。
カメンダーレディのスタイルのまま、自身の400ccのオートバイを駆ってきたのだ。
ハヤトはすぐさま後部座席にまたがった。
「しっかりつかまっていてよ!」
アカネはオートバイをウィリーさせると、急加速で引ったくり犯のオートバイを追いかけ出した。