127.お兄ちゃんと一緒
この日は志武兄弟が通う小学校で、1年生の親子ふれあい活動が行われた。
設定されたのは平日の昼間で、こういう時は、たいてい母親が来るものだ。
中には、父親や祖父母が来る家庭もある。
志武家のように、兄姉が来る場合もまれにある。
大学生のツヨシ(大2)とアオイ(大1)は、こういう時に都合がつけられるように、時間に余裕をもって大学の講義のスケジュールを入れてあった。
学生によっては、1・2年生の時にびっしり講義のスケジュールを入れて卒業のための単位を大部分取得してしまう。
就職活動の3・4年生の頃には、ほとんど大学に行かなくていいようにだ。
だが、ツヨシやアオイがそうしてしまうと、弟妹たちのために平日の昼間に時間を割けなくなる。
そうならないよう、1・2年生でありながら、ツヨシやアオイはあまり講義を入れていないのである。
今日は小学校にツヨシがやってきた。
参加の保護者の中では、いちばん若い。
「タダシ君とこ、ママもだけどパパも若いね」
クラスメートの1人がタダシに言った。
「ママ? こないだ、保健室に迎えに来た人のこと? あれはお姉ちゃんだよ」
タダシが訂正する。
「じゃ、あの男の人は?」
「あれはお兄ちゃん」
クラスメートたちが、口々に感想を述べた。
「そうなんだ」
「かっこいいーー」
「背たかーー」
「イケメンだね」
この日は、児童、保護者が一緒に、じゃんけんゲームをしたり、ボール遊びをしたりして活動した。
「じゃあ、夏休み前なので、持ち物はおうちの人と一緒に持って帰ってくださいねーー」
活動の最後、先生から話があった。
持って帰る物は、いろいろある。
体操服、給食袋、道具箱、防災頭巾、鍵盤ハーモニカ、アサガオの鉢……。
「ずいぶんあるな」
ツヨシは周りを見た。
見ると、これだけフルに持っている子は、そうそう居ない。
「タダシ」
「なに、兄ちゃん」
「これ全部、今日持って帰る物なのか?」
「うん、まあ……、今日までというか……」
「こんなに持っている子、周りにいないぞ」
「うう、痛い所を突かれた」
「ほんとは、毎日少しずつ持って帰るんだったんだろ」
「まーねー」
「まーねーじゃないよ」
「次から気をつけるから。ねえん、持つの手伝ってよ、お兄さま~~あん」
「その、ひめっこズキュン風の言い方はやめろ」