123.今時のスク水はセパレート
夏になると、学校では水泳の授業が行われる。
志武兄弟たちの水着は、兄姉たちが使用した物のお下がりを、弟妹たちが順繰りに使用している。
すなわち、ツヨシ(大2)が使用した物はハヤト(高1)が使用し、ハヤトが使用した物はコウジ(中1)が使用する。
アオイ(大1)が使用した物はアカネ(高2)が使用し、アカネが使用した物はキイロ(中2)が使用する――といった具合だ。
だが、水着も永久に使えるわけではない。
プールでの水泳学習で使っていると、塩素の影響でくたびれてくるのだ。
兄弟姉妹の女と男のそれぞれ4番目となるミドリ(小5)とヒロシ(小4)の水着に関しては、新調することにした。
兄姉のお下がりを着ることが多い2人としては、新品を着ることができるので大喜びだ。
2人はさっそく兄弟たちの前で試着して見せた。
最近の水着は昔より肌の露出部分が少なくなっている。
男子用も女子用も、パンツの裾が長く、太ももの真ん中ぐらいまであるのだ。
また、女子用はワンピースではなくセパレートである。
「といっても、ビキニというわけではないんだね」
「うん、おへそが出ているわけではないし」
「ぱっと見、分かれているかどうか分からないね」
「でも、ちゃんと分かれてるんだよ、ほら」
ミドリが水着の上下の継ぎ目ををめくって、兄弟たちにおなかの肌を見せた。
「へえー、ホントだ」
兄弟たちが、思うことを次々口にした。
「ワンピースの水着だと、トイレの時、なかなか脱げなくて大変なのよね」
「え、そうなの?」
「そうよ。濡れるとぴったりくっついちゃって、なかなか脱げないから」
「こないだずぶ濡れになったアカネ姉さんが、なかなか服を脱げなかったみたいなもんか」
「男には分からない苦労だな」
「セパレートなら、パンツだけ脱げばいいから、男子と一緒だよね」
「パンツが脱げるっていえばさ、飛び込み台で頭から飛び込む時、しっかりゴムしばっておかないと、勢いでパンツが脱げちゃう時あるんだよね」
「あー、あった、あった」
「僕も覚えがある」
「いやだ、ほんと?」
「女子には分からないわね」
「ミドリお姉ちゃんも気をつけないと」
「やーねー。ちゃんと、上下をスナップボタンでとめて、めくれないようになってるのよ」
「どれどれ? あー、ほんとだ」
「これなら、足からザブ~ンと飛び込んだ時に、上がめくれる心配も無いね」
「俺たちの頃とは時代が変わったな~~」
ミドリの着たセパレートタイプのスクール水着を見て、感心する事しきりの兄弟たちであった。