119.恋人に見えても兄妹です
ネットアイドル「シブリンズ」の衣装調達のため、ハヤト(高1)とキイロ(中2)で買い物に来た。
買った服をベースにリフォームするのだ。
キイロがいくつか試着した後、買う服を決めた。
試着を終えたキイロに店員が声をかけた。
「これにお決まりですか。よくお似合いでしたよ」
「ありがとうございます」
「あちらの彼氏さんにも見てもらわなくていいですか」
「え……、あ、大丈夫です」
レジで会計を済ませ、キイロは紙袋を抱えてにこにこしながらやって来た。
「えらく機嫌がいいな。気に入ったのが買えたか」
「へへ。あのね、兄さんのこと“彼氏さん”だって」
「なんだ。ちゃんとアニキって言ったか」
「わざわざ言わないよ、そんなの。――こうやって見てみると、男女の2人組のどれくらいが兄弟姉妹なんだろうね」
ショッピングモール内の客たちを見ながらキイロが言った。
「そうだな。わざわざ『きょうだい』って名札付けてるわけじゃないし。――俺たちの場合、どれくらいの年の差まで恋人同士に見えるかな?」
「私もアニキも、上の兄さん姉さんとだったら、みんなオッケーじゃない?」
「兄さんとキイロ……、俺とアオイ姉さん、アカネ姉さん……、まあそうだな」
「下は……、アニキはミドリぐらいまでじゃない? 私はコウジかな? モモコやヒロシだと、やっぱり明らかに妹、弟って感じだよね」
「なるほどなー」
「でも、モモコとヒロシの2人だったら、それらしく見えるかも」
「いやあ、小学生同士の男女だったらやっぱり兄妹に見えるだろ」
「小学生でも、ミドリとヒロシだったら、微妙じゃない?」
「う~ん、そうかもな……。――っていうか、何の話だ。俺たち兄妹同士なんだから」
「そうだった、そうだった」