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111.横断歩道は手を挙げて
ヒロシ(小4)とチャコ(年中)で出かけていた。
「あ、チャコ、信号だよ」
「うん、信号ーー」
「何色で止まるんだっけ?」
「あかーー」
「そうだね」
「あおになったら、わたるんでしょーー」
「えらいぞ、よく知ってるな」
「あ、お兄ちゃん、青になったよ」
「あ、待って。ちゃんと確認しないと」
「かくにん?」
「右見て、左見て、もう一度右見て、車が来なかったら渡るんだ」
「かくにんするーー。車来ないよ」
「よし、じゃ、渡ろう」
「あ、待って、お兄ちゃん」
「どうした?」
「ちゃんと手を挙げないと。幼稚園で習ったよ」
「あ、そうか。そうだったな」
手を挙げて横断歩道を渡る事など、もう滅多になくなっていたヒロシであったが、この時はチャコと手をつなぎ、反対側同士の手を挙げて渡ったのであった。