101.世界一、宇宙一
「ただいまー」
キイロ(中2)とミドリ(小5)が、ヒロシ(小4)とタダシ(小1)の手洗いを終える頃、コウジ(中1)が帰ってきた。
「コウジ、手洗うでしょ?」
「やだな姉さん。小学生じゃないんだから。ちゃんとやるよ」
「こっち来て」
「なに?」
キイロに呼ばれ、コウジはキッチンにやって来た。
手洗いを終えたばかりのヒロシとタダシがタオルで手を拭いている。
キイロとミドリは腕まくりをして、まだ手も濡れたままだ。
「今ね、ヒロシとタダシの手洗ってあげたの」
キイロが言った。
「ふーん、それで?」
「お兄ちゃんの手も洗ってあげる」
今度はミドリが言った。
「俺の手を? 俺はいいよ。自分でできるから」
「いいからお兄ちゃん、こっち来て」
洗面所の前、コウジを真ん中にして、キイロとミドリが両側に立った。
キイロがコウジの右手を、ミドリが左手を取り、水で濡らしてからハンドソープの泡をつけて洗い始めた。
「どう?」
キイロが聞く。
「いや、どうって言われても……」
「サービス、サービスう」
とミドリ。
洗い終えた。
「じゃあ、僕らが拭いてあげるよ」
今度はヒロシとタダシが、タオルでコウジの手を拭いてやり始めた。
「兄ちゃん、うれしい?」
真ん丸おめめでタダシがコウジに聞いた。
そんな目で聞かれたら、もちろんこう答えるしかない。
「い……、いやあ、うれしーなー。兄ちゃん、世界一の幸せ兄ちゃんだ」
「兄ちゃん? コウジ、それだと私が入ってないんですけど」
今度はキイロがほっぺを真ん丸にして言った。
「いやー、だから、そのー、世界一幸せな兄ちゃんで、宇宙一幸せな弟です!」
「そ、よかった」
キイロもにっこりになった。
「兄ちゃんも大変だねーー」
「誰のおかげだよ!」
タダシの言葉にコウジが返し、みんな笑った。