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猫、異世界で勇者になる…たぶん

掲載日:2026/10/25

猫を主人公にした転生ものが書きたくて書いてみました。

その猫の名前はタマだった。

どこにでもいる、白黒ブチの雑種猫である。

趣味は昼寝。

特技も昼寝。

将来の夢は、もっと昼寝。

そんなタマの人生……いや猫生は、ある春の日に終わった。


お気に入りの公園のベンチで昼寝をしていたところ、自転車のおばちゃんが落としたちくわを追いかけて道路に飛び出し「にゃっ!?」という間に、光に包まれたのだ。


そして目を開くと。


「ようこそ、異世界へ!」


まぶしい部屋で、金ピカの女神が両手を広げていた。

タマは言った。


「にゃー。」


「驚かないの!?」


「にゃー。」


「あなた死んだのよ!?」


「にゃー。」


「異世界転生よ!?」


「ごはん。」


「あっしゃべった!」


女神はびっくりした。

タマもびっくりした。

今の自分の鳴き声が、なぜか人間の言葉になっていたからだ。


「ごはん。」


「第一声がそれ!?」


女神は額を押さえた。


「いい?あなたには特別な能力を授けます」


「カリカリ無限生成?」


「違う」


「ちゅーる無限生成?」


「違う」


「猫じゃらし召喚?」


「なんでそんな発想なの」


女神は大きくため息をついた。


「あなたには『万能スキル』を授けます!」


ジャジャーン!という効果音まで鳴った。

すると空中に文字が浮かんだ。


【万能スキル:どんな能力でも習得可能】


「おお。」


「すごいでしょう?」


「ちゅーる出せる?」


「たぶん出せる!」


「神。」


「そう!私は神よ!」


こうしてタマは異世界へ送り出された。

なお、転生先も猫だった。


「人間じゃないんかい!」


森の中で自分の肉球を見たタマは叫んだ。


「せめてイケメン勇者とか!」


しかし返事はない。

近くにいたリスが逃げただけだった。

とりあえず歩いていると、巨大なオオカミが現れた。


「グルルル……」


明らかに強そうだった。

タマは震えた。


「終わった。」


しかし次の瞬間。


【危機を認識しました】


【『超高速逃走』を習得】


「なんか覚えた。」


タマは走った。

ものすごく走った。

風になった。

オオカミが豆粒みたいになった。

山を三つ越えた。


「速すぎる。」


本人も引いていた。

やがて町にたどり着く。

門番がいたが、猫だったので気にせずスルーしてチェックもなかった。

そうして歩いていくと、冒険者ギルドという建物を見つけた。

タマは堂々と入った。


「依頼を受けたい。」


一斉に振り返った冒険者はタマを見て驚いていた。


「猫!?」


受付嬢もタマを見て、椅子から転げ落ちた。


「猫がしゃべった!」


「失礼な。猫だからってしゃべらないと決めつけるのは偏見だ。」


「いや普通しゃべらないから!」


大騒ぎの末、タマは冒険者登録をすることになった。


種族欄【猫】

職業欄【猫】

特技欄【昼寝】


「ふざけてます?」


受付嬢が聞いた。


「真面目です。」


ところが、最初の依頼で事件が起きる。


依頼内容。

【畑を荒らすゴブリン退治】


畑に行くと、ゴブリン十匹が現れた。


「ギギギ!」


声を上げながら、棍棒を持って近寄ってきた。


「怖い。」


タマは正直に思った。

すると『威圧』を習得しましたとタマの脳裏に浮かんだ途端、タマの背後に黒いオーラが立ち上った。


「にゃ。」


タマが一言鳴いた途端に、ゴブリンたちは恐慌状態になった。


「ギィィィ!!」


叫びながら全員逃走。

依頼終了。


「なんか逃げた。」


その後も、ドラゴンが出てきて一言、


「怖い。」


途端に『ドラゴン殺し』習得しましたと脳裏に浮かび、ドラゴンを倒してしまい、魔王軍を見て、一言


「多い。」


途端に『広域殲滅魔法』習得と脳裏に浮かんだ途端、目に見える範囲が荒野と化して魔王軍が一瞬で殲滅された。


その後も、高い崖を見て、


「登れない。」


『飛行』習得しましたと翼が生えたように自由に空を飛んでいくという調子だった。


異世界転生して三か月後。


異世界最強生物ランキング。


一位 白黒ブチ猫タマ

二位 魔王

三位 古代竜王

四位 災厄の巨神


「なんで?」


タマ本人が一番わかっていなかった。


そしてある日、ついに魔王が現れた。


「我こそ世界を滅ぼす者!」


高らかに宣言する魔王。

しかし、ちょうどお昼寝タイムだったタマは一言


「眠い。」


『絶対睡眠空間』習得しましたと脳裏に浮かんだ途端に、魔王も周り全てを巻き込んで空間を隔離してしまった。


魔王が寝た。

四天王も寝た。

側近も寝た。

城の兵士も寝た。

ついでにタマも寝た。


三日後、目を覚ましたタマは欠伸をしながら言った。


「何か言ってた?」


目を覚ました魔王は涙目で頭を振った。


「何も言ってません。もう悪いことしません……」


こうして世界は平和になった。

人々はタマを英雄として称えた。

伝説にはこう記されている。


『救世の聖獣タマ。その力は神を超え、ドラゴンを退け、魔王を屈服させた』


一方その頃、当の本人は王城のソファで丸くなり「ちゅーるまだ?」と聞いていた。


世界最強の猫にとって、一番大事なのは今日のおやつだったのである。

こんなチート無くても『にゃー』と可愛くおねだりで、ちゅーる召喚し、『ぐるぐる』鳴いて睡眠魔法を使い、お膝やお腹に乗って拘束魔法。

猫って最強だよね。

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