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毒舌な裏の王子様

高校2年生の城崎千年シロサキチトセ――学園一の美少年で女の子たちの王子様、完璧で頭も良く、誰もが憧れる存在。

でも、その裏にはちょっと毒舌で、自由気ままな本性が隠されている。

そして、誰にも言えない秘密がひとつ――実は女の子。

そんな千年と、少し不器用な男子・鳴海レイ(ナルミレイ)。

男友達として接する鳴海レイに、まだその真実は知られていない――

二人の微妙な距離。チトセの秘密が、いつかレイの目に触れ、二人の関係を変えてしまうかもしれない。

これは、笑って、もどかしくて、ちょっと切ない青春ラブコメ

6限目のチャイムが鳴り、教室が歓喜に包まれる。午後のホームルームを終え、皆が下校や部活に向かう。

レイも鞄を背負い、家路につこうとする。その時、ある教室から声が聞こえてきた。声の主はあの王子様系男子――城崎千年だった。


「はぁ…毎日毎日、同じようにかっこいい可愛いって、よく飽きないよな。あ〜やだやだ、こっちまで頭悪くなりそう」


普段の凛々しい王子様はどこへやら。クラスメイトへの罵詈雑言が息を吸って吐くように出てくる。

レイは、学校の王子様の裏の顔を知ってしまった。


「金持ちで頭良いボクがちょっと優しくしてやってるからって、調子乗るなよ。貧乏人が…」


――あれは… 城崎…?


放課後の校舎は静かだった。ドアの隙間から漏れる光がレイの視界に入る。

城崎はベッドの端に座り、ブランケットの下で足を組み替え、ポテチをもう一枚口に放り込む。


「あ。」


一言だけ。「しまった」という表情が一瞬浮かんだが、すぐに消えた。

城崎の瞳がレイの姿を捉える。完璧な仮面の裏側にある、剥き出しの苛立ち。


「……聞いてた?」


声は低く平坦。「あーあ」と小さく呟き、手元のポテチを弄ぶ。逃げる気配はない。


「お前女の子が可哀想だろ」


ふ、と鼻で笑う城崎。眉がぴくりと動いた。


「可哀想? あいつら勝手に崇拝してるだけでしょ。ボクは一度も頼んでない」


ぽりぽりとポテトチップスを噛む音だけが響く。

チョコレートの空き箱が床に散らばり、32個入りが空になっている。午後の間に全部食べたらしい。


城崎はちらりとレイを見上げ、言葉を続けた。


「キミもさ、あいつらと同じだろ。『王子様は優しい』って顔して、裏ではバカにしてるだけだろ?」


言葉を切って一拍置き、目線をレイの足元に落とす。


「ボクの本性知って怖くなった? 逃げた方がいいんじゃない。ここで見たこと、全部バラしたらどうなるか、わかるよね?」


「あぁ?別に怖くもなんとも、俺はお前みたいな奴に興味ねえよ」


咀嚼が止まった。城崎の目がレイをじっと見つめる――睨んでいるのか、呆れているのか。


数十秒、時間が凍りついたように感じられた。夕陽が傾き、教室のデスクに置かれた書類の影が伸びる。


やがて、ぷっ、と空気が抜けるように城崎が吹き出した。


「あっはは、何それ。興味ない? ボクに?」


笑みの後に残ったのは、奇妙な静けさだった。

笑みを引っ込め、真顔に戻る。


「ふーん。じゃあ何でまだここにいるわけ?」


普通なら逃げるであろう状況。だが城崎は堂々としている。


「あんたは女の子の気持ちを考えたことないのか? このへんちくりん王子様」


「は?」


面と向かって「へんちくりん王様」と呼ばれたのは、生涯初めてだろう。


城崎は額に手を押し当て、深く息をつく。


「キミ、本気で言ってる? ボクがちょっと笑っただけでキャーキャー言ってる奴らの気持ちを考えろって? 無理でしょ。あいつらボクのこと見てない、偶像崇拝するだけで、中身なんかどうでもいいんだ」


微かに揺らぐ声が混じっていた。本人も気づかない。


「それに、キミだってボクのこと嫌いなんだろ。今の聞いたんだから」



夕日がさらに傾き、昨日までの教室の騒がしさもどこか遠くに感じられる。この一角だけ、世界から切り離されたように静まり返った。



「あぁ?元々嫌いだわ、全女子がお前に行くせいで俺の学園青春イチャイチャライフが台無しだ!」


「何の話してんの」


城崎は深く息をつき、正論を返す。


「それボク関係なくない? キミの魅力の問題でしょ」


ふと、何かを思いついたように目を細める。


「ていうかさ。ボクのこと嫌いで、さっきのも聞いちゃって。なのにまだ帰らないの?」


ポテチの最後の一枚をひょいと摘まみ、ひらひらと振る。


「ボクに文句言いたいだけ? それならもう満足したでしょ。」



城崎はポテチの欠片をぱらりと払うと、ゆっくり立ち上がった。



「くっ…あぁ、もういいよ、帰ろ」


レイの背中に向けて、ポテチの欠片をぱらりと払う。


「あっそ。もう来んなよ」


その日の夕焼けと教室の静けさが、レイの心に深く刻まれた。


翌日――

教室はいつも通りの喧騒に包まれる。城崎を囲む女子の輪、男子とふざけ合う城崎、どの角度から見ても隙がない。

だが、ふとした瞬間、レイの席の方へ視線が流れる城崎の姿は、誰も気づかなかった。

ここまで読んでくれてありがとうございます!


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