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メタルとメガネと。  作者: ノコノコ
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五話 甘味 ガーゴイル

僕の女体化から日数もそれなりに経った。今ではクラスメイトとなかなか仲良くやれている。


しかし中には……特に男子が僕に対しかなり強烈なアプローチをしかけてくるようになった。



挙げるときりがないけど特に気持ち悪かったのは僕の机に『神空蒼風流』と

規則正しく円上に書かれていたことだ。意味が分からないのがより気持ち悪さを引き立てていた。

どこかで聞いた気がしたけどそんなこと無かったぜ。




休み時間



「文鎮……やっぱり女性の下着を着けているのか!?なァ!?そうなのか!?」


彼は僕の事情を知っている大切な友人だがそう思ってるのは自分だけな気がしてきた。



「まぁ……着けてるけど」「俺の下着も見せるから見せてくれ……それが不満なら俺は下着の中を見せるのもやぶさかでない」



こういう時ほど彼は一層気持ち悪くなる。



「コラァァーーッッ!!」


クラス中から注目を受けながら、大声を上げた一人の男子。


彼はいつぞやに見た美少年じゃないか。

その彼は粕田を睨みながら近付いてくる。


「女子に対してそういう言動ってどうなわけ?ねぇ?どうなの?」



「誰だよお前……他の女とちちくりあってろよ」


粕田が静かに立つ


「……俺は蒼風流の師範代……高橋三郎(サブ)だ。彼女にちょっかい出すんじゃないよッッ!!メガネが盛ってんじゃないよッッ!!」



粕田は涼しげに遠くを見つめゆっくり口を開いた。




「ぷっちーん……キたわ、久方ぶりにキたわ……こいつアレだ……そのアレだ……『ぷっちーん』だコレ『ぷっちーん』だコレ……」


「え」


険悪な空気になる2人。気付けば教室にいる生徒の視線はそこに集まっていた。


粕田の口がゆっくりと開かれる。


「猿、よく聞け」

「猿じゃないサブだ」


「俺が女子の下着を見るのにどれだけの努力が必要か分かるか?猿よ?

世の摂理『等価交換』を用いても女子の下着に対等な物なんて俺は持っていないのだ…………。

しかしお前はそのお得意なチャンバラで宙を舞うだけでやんややんや勝手に女子が集まるわけだ。

その上、お前の『やらないか』の一言で女子は服を脱ぎ、トイレというエデンで見事にアッーー!!

そういうのは剛田主義(ジャイアニズム)って言うんだぜ?と、俺はそう言い、スピードワゴンはクールに去ります。」



サブは地団駄踏んだ



「俺はそんなこと言わないがなッッ!!」


サブは白虎の如く粕田に向かって飛び掛かる。



「……仕方ない……出すか……『本気』」



粕田はおもむろにメガネを外した。その瞬間、粕田の体からおぞましいオーラが放たれた。




「う、うぅ、うぉおぉおーーッッ!!」




「神空蒼風流ゥゥ!!」


サブの体は宙に舞い、まるで風のように浮遊しながら粕田の首に迫る。


「ヒャッハァーーッッ!!いただきィィ!!」




「甘いな猿……リズムに乗るぜ!!」



粕田は小刻みに揺れながら足だけの跳躍で窓の外に飛んでいった。


「ぶゥーーんッッ!!」



「クソッ……逃げられたか……もうここにいてもしょうがない……猿は去る」



そう言い残しサブは教室から出ていった。




「なんだったんだ……」




放課後



「粕田あのまま帰って来なかったなぁ……」



粕田も窓から退路を確保とは段々人間離れもエスカレートしていっている……


これも高校デビューの力……


「義経さん!」




突然背後から名前が呼ばれる。普通は振り向く。僕も振り向く。誰もが振り向く。


「義経さん委員会確かあたしと同じだね?」


声質からして男子かと思いました。失礼しました。

女子でした。



「義経さん?」


「ん?なんだって?」

「だから……あたしと義経さん、同じ委員会だったよね?」




あれ?僕、委員会に入った覚えないんだけど……


「え?……私、委員会入ってたっけ?」



「あ……義経さんも……あたし勝手にごっつぁんに委員会決められたんだよ……たぶん義経さんも……」


「なん……だ……と」


後藤の野郎覚えとけよ……うちのハデス黙ってねぇぞ。



「……で、何の委員会?」


「あたしたちは放送委員会だよ」


うへあ……


「今日は委員会あるんだよね?」


「そうなんだよ……お互い変な形で委員会やることになったけどこれからよろしく」



あれ?あれあれ?

この娘良い娘じゃないの!?


「こちらこそ……えっと名前……」


吉田(よしだ) 左府(さふ)。皆はガーゴイルって呼んでる」


「よろしくガーゴイルさん」


この娘は良い娘だ。きっと良い娘だよ。いや良い娘であってほしい。

この高校来てやっとまともな友達に巡り会えた気がする……


アッ、ヤバい目頭熱くなってきた



「てか、印象違ったよ」

「うん?何?」


「義経さんの第一印象ちょっと怖そうだったから」


「そうな……んだ……」


「す、少しだよ少し!!」


僕なりに明るく振る舞ってたんだけどなぁ……


「ご、ごめん!!八ツ橋あげるから元気出して!!」


「…………」



ぶっちゃけ気兼ねなく話せる女子を見付けられたのは奇跡に近い。

他の女子とも色々話したが相槌でしか返せない話題ばかりだった。



「八ツ橋嫌いだった?え、えと……ういろうもあ―」


「ガーゴイルさん、放送委員って私達だけ?」


「いや男子もいるよ2人……ういろう苦手だったか……じゃ、じゃあ、ちんすこうとか―」


委員会は少人数で作業をするわけだから男子と僕だけ、という空間だってなったりするだろう。となれば男子のアプローチも相当なものになるなーる


てかそれが怖くて委員会は入りたくなかったのに……


「甘いもの苦手だったんだね……ごめんね。あっ、そうだ!あたしこんなのも持ってきて―」


何故かよくわからないけどガーゴイルさんは慌てながら僕を気遣ってくる。


それは嬉しいけど……。

さっきから気付いていなっぽいけど実はもう放送室は目の前で、着いてから10分ほど経過している。

しかもその10分はガーゴイルさんが甘いものを僕に勧め続けた時間だ。


「このサーターアンダギーは、実は沖縄の―」


「そろそろ……入んない?」


「え、あ……うん……」



ガーゴイルさんは悄然と俯き、僕が放送室の扉を開けると同時にサーターアンダギーをポケットに戻した。



カーテンが開いてるのか、橙色の逆光で扉の向こうの景色はまるで分からない。

扉の向こうに人影が2人見えた……気がする。



誰だろう?


目を細めてよく見てみる


「あっ……れ……?」


「義経さん、男子はもう来てたみたいだね」



「お前ら……まさか!?」



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