二話 『ママ』である
今日は高校の入学式。
女子になった僕は意外にも冷静であった。
「問題は制服じゃね?」
だって男の子だったんだもん……。手元にある制服は言わずもがなです!
入学式出れない……
「ってか女子の時点でアウツッッ!!」
学校行っても男子の僕である事を証明できなければ当然、入学式どころか入学なんてできないなぁ
豊艶な胸の膨らみに華奢な体躯……立派な女子である
しばらく黙考した
僕はおもむろにパジャマを脱ぎ、鏡の前に起った。
真っ白な肌に美麗な体。
背筋までかかる漆黒の髪。そして端整な顔立ち。
何もかもパーフェクトな自分。
小学二年生以来から採ったことのない100点は今正に僕の存在自体がッッ!!
「だけどこんな綺麗なおなごの体を見ても何故か僕はなんら興奮しないんだけど……」
まさか体のホルモンが変わってしまっているのだろうか!?だとしたら僕は男子にしか恋愛できな……
「いやいや、こんちきしょうッッ!!僕の片想いはどうなんだよどちくしょうッッ!!」
邪推してしまった……
「へ……フヘへ……世の中同性愛という恋情だって存在するんだ……想い人とはレズレズすりゃあいいんだよォ……」
膝を屈し、緩慢な動作でパジャマを着ようとしたその瞬間、階段を上がる足音を僕は聞いた。
「アウチッッ!!!」
これはまずいんじゃないのこれは
あの足音……『ママ』である
「起きなさい!!いつまで寝てるの!!」
そのお決まりの台詞を吐きゆっくりとドアノブが回る
「ア、アカンッッ!!」
とっさに出たとはいえ最悪な展開だ
「そ、その声……まさか」