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x星人 -a short story-

〈彼岸花幻なれど此岸かな 涙次〉



【ⅰ】


『NWSF怪畸幻想譚 斬魔屋カンテラ!!』では、エイリアン案件は、前シリーズ第72話でしか扱つてゐない。それも、過去を振り返つた部分が多い、取り上げ方でだ。

「異星の客」石田玉道は、へびつかひ坐の某恒星系から來たと云ふ。彼が齎した新しい仕事について触れてみやうと思ふ。それも、石田本人の一人称記述でだ。



【ⅱ】


 我が星の一員たちは、他惑星の文明に触れる時必ず、医療関係の職務に就く。私たちの進んだ文明をそのやうに使ふのだ。私は出來が惡かつたから、地球で、犬猫小鳥及びエキゾティック・アニマル専門の獸醫師になつた(これは地球と云ふ星に顕著な職種なのである)。

 私たちが医療の現場へは、試験を介さずに就くと知つてゐる人は尠ない。当惑星、地球に於いて、へびつかひ坐は、ギリシア神話のアスクレピオスを記念したもの。神醫であつたアスクレピオスに因んで、ノーチェックで醫學の道に進む事が決まつてゐるのだ。(このアスクレピオス、余りに印象的なので、他惑星でも、我々は医療の道を行く。)

 この緑の惑星・地球で、醫師、齒科醫師、獸醫師、その他の醫學関係者の内、ごく尠ないパーセンテージではあるが、私たちの星から來た者が居坐つてゐる。



【ⅲ】


 で、へびつかひ坐の名も知れぬ恒星系から來た私たちだが、同系の別の惑星から、この地球にやつて來てゐる者もある。言葉は私たちと通じない。

 彼らは好戦的で、私たちのやうに地球の為に、少しでも盡くさうとするところは、ない。寧ろ、在り來たりなエイリアンの道を歩み、地球人に被害を及ぼさうとしてゐる。一つだけ倖ひな事には、このx星人(と假にして置かう)を、私たちは目視で、何に化けてゐても見破る事が出來る。

 私がカンテラ一味と近付きになつたのは、x星人を退治て貰ふ為である。私たちの星から來た者は、武の道はからきし駄目だと相場が決まつてゐる。だが、カンテラ一味さへゐれば、地球の平和は守れる。

 こゝ日本國(私たちには國と云ふ概念がないが)に集中して、x星人は地球滞在してゐるのだ。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈ポセイドン虛し海指す長崎忌カウントダウン始まる敗戰 平手みき〉



【ⅳ】


 で、私とカンテラさんとじろさんとで並んで歩いてゐたところ、駅前の時計塔にするすると攀ぢ登つてゐる男を發見。だうやらx星人で、時限爆彈を、時計塔の時計を利用して、仕掛けやうとしてゐるらしい。道行く人は皆、彼の事を無視してゐる。これは日本人に限つた事らしいが、人は他人のする事に頓着しなさ過ぎるのだ。

 テオくんが云つてゐたが、彼が一人(?)で、地下鉄に乘り込んでも、誰も氣に掛けないと云ふ。彼は「猫」と云ふ、人間社會では「お客様」的存在なのに...。



【ⅴ】


 で、時限爆彈男の後を追つて、じろさんが時計塔に攀ぢ登る。だうにか時限爆彈ごとx星人を叩き落としたやうだ。こゝに來て初めて人の目が集まり始める。野次馬的にしか、この故郷・地球の事を思ひ遣る人がゐない。

 叩き落とされたx星人は、勿論の事、カンテラさんが斬り伏せた。「しええええええいつ!!」‐「あ、カンテラさんだ!」‐「じろさんもゐるぞ!」。全く以て平和なものである。x星人はものも云はず絶命。野次馬に取り卷かれてゐる。「なんか機械持つてるぞ」「あれは爆彈だよ」とか、こゝに來てやうやく健康な人と人との触れ合ひが復帰する。本來ならもう遅い。

 私は安全の為、死んだx星人の手から、時限爆彈をもぎ取つた‐ 。



【ⅵ】


 で、これに附帯して來るのが「依頼料」なのであるが(カンテラ一味と付き合ふには不可欠な物だと聞いた)、私たちの星ではざくざく取れる、炭素の塊「ダイアモンド」が、こゝ地球では非常に稀少で髙価だと云ふ事。私はダイアを兩手に一杯、カンテラさん・じろさんに渡した。これにて一件落着とするのが、カンテラ一味の作法らしい。ので、この件はこゝ迄。

 地球の平和はカンテラたちの双肩に懸かつてゐる、と云ふお話でした。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈空蟬が夏の始末をつけにけり 涙次〉



 お仕舞ひ。

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