幸せだった家族
『えー。依頼者は桜木菜月さん。交通事故で夫と娘と死別してしまい、夫に言いたいことがあるとのことです。』
『槇野くん報告ありがと〜。じゃあ早速いきますか!!!伊藤くん!!!』
『え?行くってどこに?』
『桜木さんのお宅だよー。直接お宅に伺って話を聞いてから夢を作るんだよここは!!!じゃあ早速行っちゃいましょー!』
なんかちょっと緊張するなー
_____________________
『着いた!!!ここが桜木さん宅!!!』
『立派なお家ですねー。』
『このお家は生前桜木さんが暮らしていた家と一緒なんだよ!先に亡くなってしまった方は家で大切な人がここにくるまでずっと待ってるんだよ!!!』
『相手がここに来るまでずっと一人で待ってるんですか・・・』
『そうだよ。でも、申請書出したら地上に降りて様子を見ることができるからそこまで孤独感はないと思うよ!!!他にも人はいるし!』
『そうなんですか!!!なら良かった・・・。ってことは幽霊は本当にいるってことですか?』
『そうだよ!割とうじゃうじゃいるよ!!!』
『えー!???やっぱいたんだ!!!』
『本来の仕事忘れかけて玄関前で喋りすぎちゃったよ!!!続きはまた今度!仕事するよ!』
『そうですねすいませんつい興奮しちゃって』
ピンポーン
『はい・・・。』
『こんにちは〜初めまして!私、今回桜木さんの夢を作らせていただくオムロの遠藤と申します!!!こちらは部下の伊藤です!!!』
『はじめまして。よろしくお願いします。』
『あーはいはいオムろの。本日はよろしくお願いします。上がってください。』
『お邪魔します。』
_________________
『早速お話聞かせていただいてもよろしいでしょうか。』
『はい。私、運転していたら横から信号無視して飛び出してきた車と衝突した衝撃で死んだんですよ。産婦人科から家に帰ってる途中で。』
『産婦人科?っていうことは・・・』
『はい。二人目を妊娠してたんです。』
『それは残念です・・・』
『二人目を妊娠したと言った時、旦那も娘もすごく喜んでくれて、本当に嬉しくてすごく幸せでした。なのにこんなことになってしまって・・・』
桜木さんの目から大粒の涙が頬を伝っていた。幸せの絶頂からある日突然どん底に落とされ露なんて思いもしないだろう。
『娘の絵里はまだ5歳で、本当に可愛くて・・・。おしゃべりするのが大好きでした。旦那も私には勿体無いくらい本当にいい旦那で・・・』
すごく桜木さんが幸せだったのかよく伝わってくる。本当に残念だな・・・。
『でも、私が地上に降りて様子を見にいった時、旦那は見違えるほど変わっていて、仕事から帰ってはお酒をひたすら飲んでいました。お酒をあまり好んで飲む人じゃなかったのに・・・。自炊もしていないようで多分毎日コンビニのお弁当を絵里にも食べさせているみたいで。もう本当に心配で・・・』
『なるほど。それで旦那様の夢に出て今の状況について物申したいということですね?』
『はい。』
『わかりました。それでは、今から撮影しますので旦那様にお伝えしたいことをカメラに向かって話していただけますか?』
『わかりました。』
『ありがとうございます。じゃあ、伊藤くん撮影お願いね。始める時も切る時もこのボタン押すだけだから。』
『わかりました。それでは行きます。3、2、1』
______________
『撮れました。お疲れ様です。ありがとうございました。この映像を主軸に夢を作らせていただきます。』
『お願いします。』
『あと、旦那様の声がか言っているビデオなどはありますか?』
『はい。携帯にあります。』
『使わせていただきたいのでもらってもいいですかね?』
『はい。大丈夫です。そちらに送りますね。』
『ありがとうございます。』
『いえいえ。本日はお忙しい中ありがとうございました。』
『こちらこそありがとうございました。ちゃんと旦那様にお伝えします。それでは失礼します。』
______________
『あー!!!終わった終わった!!!会社に帰るぞーーー!!!』
うわ。さっきまで静かだったのに家出た瞬間戻った。オンとオフが激しいな。
『そうですね。っていうかまさか本人を撮影するなんて思ってませんでした笑』
『前はそうじゃななかったんだけど、やっぱり私たちが考えたセリフじゃなくて本人からの声が一番その人に届くんだよね〜ちなみに顔はマスクに反映させるために撮ってる!!!』
『なんなんですかそのすごいマスクは!!!』
『帰ったら見せてあげるよ〜その前に飯だ飯!!!』
『はい!!!』