それぞれの事情
『初めまして!!!君が新入りの子だね!!!私、遠藤です!!!よろしく!!!』
うわーめっちゃ元気ー。この人の元気で発電できそうなんだけど。ちょっと苦手なタイプだけど悪い人ではなさそうだし・・・。
『私はー・・・まあなんか色々やることあると思うのでとりあえず失礼しますね!じゃあ後はごゆっくり。』
『はい。ありがとうございました。』
(絶対めんどくさいから帰ったんじゃん)
『今日からここで働かせていただく伊藤です。よ、よろしくお願いしますー・・・。』
『はーいよろしくよろしくー。ほーらみんなも自己紹介してください!!!』
『山田です。よろしくお願いします。』
確かに山田って感じ!めっちゃいい人そう!この人は絶対優しい!
『松尾で〜す。よろしく〜』
典型的なチャラ男だな。チャラ男以外の何者でもねえな。好きになれそうにねえ。
『花園です・・・。よろしくお願いします・・・。』
人と話すのはあんまり得意じゃなさそうだな。でもよくみたら結構可愛いかも・・・!
『槙野です。よろしくお願いします。』
ザ・真面目、学生時代恋愛は一切せず勉強だけをただひたすらにやってきたタイプだ。
『原西です〜。よろしくお願いします〜。』
仏のような笑みだ。まるで聖人じゃないか!なんでも買ってあげたくなる。
『以上で全員だね!!!さあ君はどんな理由でニートになったのかな???』
『えっ?なんで俺がニートだったこと知ってるんですか?』
『だって、ここで働いてる人は生前ニートだった人達だよ???』
『えっ!?そうなんですか!?』
『そうなんですよ!!!ニートだった人たちをここで働かさせてるんだよこの会社はー。ちなみに私は同期や上司からのイジリがいじめになっていって鬱になって仕事辞めてニートになったよ!!!』
そんな声のトーンで話す内容じゃないよ・・・。その明るさの裏にはたくさんの苦悩があったんだな・・・。遠藤さん苦手とか言ってごめん。
『僕は上司からパワハラされて耐えられなくなって仕事辞めました。』
山田さんにそんなことするなんて絶対に許せない。クズすぎる。
『俺はお袋が事故で下半身付随になっちゃってずっと付きっきりで介護するために辞めた!』
松尾お前なんていい奴なんだよ〜!!!なんでこんないい奴死んでからも働かせるんだよ鬼畜すぎるだろ!!!
『私は、上司からセクハラされて限界になって辞めました・・・。』
クソすぎるだろ・・・。これから花園さんは俺が守る。
『僕は営業成績がすごくよくてそれを気に入らなかった人たちに目をつけられていじめの対象になって仕事辞めて引きこもりになりました。』
優秀だったが故に目をつけられたんだな。辛かったな・・・。
『僕は過労で倒れて辞めました〜。』
原西さん・・・。そんな仏のような顔の裏側にそんな辛い経験が・・・。しんどいって言えなかったんだ・・・。
てかみんな働いてたけど事情があってニートになったんだ。俺だけじゃんはなからニートだったのって。・・・え?俺、場違いじゃね?しかもそんな深い事情ないし・・・。
『伊藤君はなんでニートになったの?」
みんなこっち見てるよどうしよう・・・。正直に言ったらやっぱり引かれるかな・・・。
『えっえーっと、お、俺はーし、親友が死んじゃったショックで鬱になって働けなくなっちゃってー・・・』
やばい嘘ついちゃったどうしよう。俺は死んでからも嘘をつくのか。最低だ。
『そうなんだ。辛かったね。』
『親友が亡くなるのはきついっすねー』
『それは残念だったね・・・。』
みんななんて優しいんだ。全部嘘だとは知らずにこんな温かい言葉を・・・。俺、やっぱり最低だ・・・。
『あー思い出しちゃったのかな。だって親友だもんね。辛いよねりゃ』
『はい・・・。』
遠藤さんごめん。たまたまシンクロしただけなんだ。俺が情けなさすぎて涙が出てきて・・・。
『でもね!!!ここなら会えるよその親友に!!!』
『え?』
『会えるんだよ!!!君の親友はきっと天国にいるから、どこに住んでるかさえわかれば会いに行けるよ!!!』
マジかマジかマジかこんなこと想定外だって!!!
『い、いやー実は親友が死ぬ前にめちゃくちゃ喧嘩しちゃって、もうお互い顔見たくないって感じだったのでー・・・』
『えーじゃあここで仲直りすればいいじゃん!!!』
『いやーちょっとまだ心の準備がー・・・。』
『きっと向こうも仲直りしたいと思ってるって〜!!!』
『いやー・・・。』
『遠藤さん、依頼来ました。』
『マジか!その話はまた今度ね!!!早速仕事してもらうよ!!!』
『はい!』
あっぶねー間一髪だったー。仕事ってマジでどんな仕事なんだろう。
読んでいただきありがとうございました!