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この映画は夜間限定上映です。  作者: 金平紫黄
2/5

そんなことってある?

  大学を卒業してからどれぐらい経ったんだろう。最近生きた心地がしなさすぎて感覚が麻痺してる。バイトがある日以外は家に引き篭もる日々を繰り返し、今の俺はなんのためにこの世に存在しているのかわからない。あれからも何回か面接受けたけど普通に通らない。ちゃんと対策したのに。完全に社会不適合者になってしまった。親に近況を聞かれても凄まじい演技力でありもしない新卒生活を熱弁し、まだバレていない。これはもう演技賞もらえるだろう。俳優になろうかな。いや、無理か。大学生の頃からやっていた飲食店のバイトはそのまま働き続けると『あ、こいつどこからも内定もらえなかったんだ笑』と心の中で小馬鹿にされるのが怖かったので今はコンビニでバイトをしている。あの頃とは一味違うモラハラ気質の店長、無愛想な従業員、日頃のストレスをぶつけるかのように理不尽な理由で怒鳴りつけてくるクソジジイどもに囲まれて、ただひたすらお金のために働き、日々を生きている。世の中は調子に乗ってイキリ倒した俺を許してはくれない。子供の頃に見た死んだ目をした大人たち、彼らはたとえ自分が置かれた環境が理不尽でも、嫌だという感情を必死に押し殺してでも生きるために頑張っていたのだ。彼らは道端に咲いている草や花のように強いんだ。そんな彼らを俺は見下したなんて俺はなんて酷い奴なんだ。嗚呼神さま、俺は今までの行動を深く反省し、改心します。なのでどうか俺に素晴らしい未来を・・・


『お前仕事中のくせに何ぼーっとしてんだよ。良いよなそんなことできる暇があって。こっちは時間ねーのによ。』


『申し訳ございません・・・』



  散々文句吐き散らしてやっと帰ってくれた。なんで俺は見ず知らずの人にこんな高頻度で怒られているんだ。でも生きるためにはたとえ自分が悪くても悪くなくても謝らなければならないんだ。それが世の中というものなのだ。あー。辞めたい。いつまでこんな生活が続くんだ。自分から行動しないと何も始まらないっていうけどそんな気力ねーんだよな。


『伊藤くん、後でゴミ出しお願いできるかな?』


『わかりました。』(めんどくせー)



  ゴミ出し中になんだか薄気味の悪い男が向いに立っていた、幽霊を見てしまったのかと思ったがちゃんと人間のようだ。よかった。変質者という感じではないが全身オールブラックでこの夜の闇に溶け込んでいる。なんかの組織の人なのだろうか。絶対裏で黒ずくめってあだ名つけられてるわ。うわ、目があったこっわ。さっさと店に戻ろう。 

  あれから仕事を終え、家に帰ろうと店を出るとさっき見かけた男がまだ立っていた。誰か待ってるのかなと思いつつやっぱりちょっと怖いので目を合わさないように少し早歩きで帰宅しようとしていた時、


ドン!!!


鈍い音が聞こえた後、俺の体は宙を舞いそのまま吹っ飛ばされた。全身が痛いの一言じゃ表しきれないくらい痛い。視界が真っ赤だ。骨も何本かいかれてる。俺を轢いた運転手は普通車から降りて心配するはずがそのまま何事もなかったかのように車を走らせている。ひき逃げかよ。なんて小根の腐った奴なんだ。意識が朦朧としてきた。あー。俺、死ぬんだ。そう本能ではっきりと感じた。嫌だ。まだ死にたくない。ちゃんといずれ就職して、結婚して、子供を授かって、幸せな家庭を築いてみたかった。親孝行したかった。あれだけ毎日のように死にてーって思ってたけどマジで死にたくはなかったんだよな。いざ自分かその立場に追いやられると人間こうなるんだな。人生何が起きるかわからないってまさにこういうことを言うのかな・・・。お母さん、こんな息子で本当にごめん・・・ってあれ?さっきの・・・黒ずくめじゃん・・・なんでここにーーーーーーーーーー



              


             午後23時58分、伊藤歩夢、23年の生涯に幕を閉じた



  













読んでいただきありがとうございました!

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