九話 サイズはハトを助けました
九話 サイズはハトを助けました
キスをしたサイズは鈍く光っていた。その光はサイズの唇からハトへと広がっていき、傷を消していく。しかし流した血は消える事はなく、サイズにも付着した。
「これはいったい……」
アックスは目の前の光景が信じられないようだ。
要もエスパーダも超能力の話は聞いていたが、実際に見るの初めてだった。同じように見守っていた。
ハトはガラスにぶつかった傷とカラスに攻撃された傷があった。サイズは全ての傷を消したが、ハトは動けないでいる。ダメージまでは消せないらしい。
「終わったよ」
サイズは笑顔を見せた。
「おばあちゃんにならなかった?」
エスパーダがサイズをジロジロ見ている。シールドのように老いる事はなかった。
「うん、なんでだろ」
「分からない。シールドと何が違うのか」
「ハイマースは無事なんだな?」
何の予備知識もない状態で奇跡を見せられたアックスは戸惑っていた。
「うん、痛みで動けないと思うけど、傷は塞いだから」
「ありがとう!」
アックスはサイズと握手をした。さらに握った手を引き寄せ、抱きついた。
「あ……」
サイズは驚きのあまり硬直してしまう。
「アックス! 離れなさい」
エスパーダがアックスを叱りつける。
アックスは何か悪いことをしたのか分からないようで、抱きついたまま戸惑っている。
「離れなさい!」
動きのないアックスに苛立ち、エスパーダは二人を引き剥がす。
「怖かったよぉ」
サイズはエスパーダにすがりついて泣く。
「アックス、セクハラ!」
エスパーダはキッとアックスを睨み付ける。
「俺はお礼をしたかっただけであって……」
「大人に抱きつかれたら怖いでしょ。そんな事も分からないの?」
非難され、アックスはうろたえている。かわいそうに、軽いコミュニケーションすらも拒絶されとは。要もそんな目に遭うんじゃないかと気が気ではない。
「つい、嬉しくて……。ハイマースの事助けてくれてありがとう」
アックスはお辞儀に留める事にしたらしい。小人と人間の文化の違いというより、日本と外国のパーソナルスペースの違いが問題になっていたようだ。
「うん……」
サイズは警戒を緩めない。
「お礼に、帰りはタダにしてあげるよ」
「うん、分かった」
まだ警戒はしていたが、乗車拒否は免れた。
「安心したらお腹すいたわね。今日のお昼は何?」
「あ……」
要が麻婆丼を食べた事を明かすとエスパーダは怒ってしまう。
「信じらんない! 人のご飯食べるなんて。しかも止めないなんて」
アックスだけでなく、要もサイズも怒られた。怒られる事によって少しだけ連帯感が出来た気がした。