七話 カラスにも追いかけられました
七話 カラスに追いかけられました
結局、アックスは麻婆丼を食べた。大人がサイズと同じ量では満足しなかったのだ。
「別にサイズの言う通りにしたわけではないぞ。ただ満腹じゃなかっただけだからな」
と、言いわけをしていた。
積極的ではないにしろ、エスパーダの麻婆丼が食われた事は事実だ。
マダムほど食に執着はしていないが、怒るのは必至。アックスが好感度を下げるのも必至。
そう考えると要は笑いが止まらない。が、傷付くのはエスパーダだ。何かデザートっぽい物で機嫌を取っておこう。
「やっぱり中華には杏仁豆腐でしょ」
「杏仁豆腐? 何それおいしいの?」
「ああ、うまいぞ。今からコンビニに買ってこようと思うが、二人きりにして大丈夫か?」
「無理」
即答だった。
「かといって、サイズを連れてアックスを一人にするわけないかない」
「俺は何もしない!」
「勝手にエスパーダの部屋に入りでもされたら困るし、怒る」
「そうだね。逆バニーの衣装を見つけて、興奮してたら引くよね」
「逆バニー……」
アックスは想像している。
「ほら、危ない」
サイズの断言に要を頷いた。
「俺は危なくな……」
その時、ゴツッ! 何かがベランダのサッシに当たる音がした。サッシには血がついている。
アックスの糾弾どころではなくなった。サッシを開けて、ベランダの様子を確認した。
そこには弱ったハトとそのハトにしがみついているエスパーダがいた。ハトがガラスに激突したようだ。
「エスパーダ!」
要は叫ぶと、アックスも続けて叫んだ。
「ハイマース!」
ハトの名前だった。




