六話 トンビに追いかけられています
六話 トンビに追いかけられています
麻婆豆腐は辛いのが当たり前だが、サイズのために唐辛子を減らしておいた。そして日本仕様のため、花椒を使わなかった。
「辛い……」
それでも泣きそうになっていた。
「じゃあ別の作る?」
「良い。食べる。エスパーダにハトを選ばなければ、良かったって思わせたい」
サイズは麻婆丼を食べ尽くして、エスパーダにはあげない気のようだ。それは多分、彼女だけでは無理である。なので、アックスに目をやった。
アックスは黙って食べている。サイズには辛いが、彼にとっては甘口なのだろう。すぐに食べ終わった。
「おかわりは?」
「エスパーダの分がなくなってしまう」
「運転手が味方になってくれないの?」
サイズに非難の目を向けられる。
アックスはそれに戸惑っているようだ。
「なぜ味方をしなくちゃいけない」
サイズを頬を膨らませる。
「私の胸見た」
「だからって俺がエスパーダに嫌われる必要はない」
「むむ……」
サイズは考えている。
要はとりあえず答えが出るまで待ってあげた。こうやって成長していくのだ。
「嫉妬させる作戦っていうのはどうかな?」
「と?」
「私と仲良くしてるのを見たら、悔しがるよ。そんな時にやけ食いしようとしてすでに食べられていたら、さらに悔しがるよ」
子供の考えた事だ。手段と目的が矛盾している。二人で麻婆丼を食べ尽くしても、エスパーダは嫉妬はしないだろう。
「嫉妬するだろうか?」
問い質してみた。
「するよ、絶対」
根拠のない自信を振りかざした。
「要も協力すればもっと完璧になる」
「確かに、人のハトを乗り回すのは良くないと思うけどね。もしハトに何かあったら弁償はするよ。俺はエスパーダのフィアンセだから」
「不吉な事を言わないでくれ。俺のハイマースが傷つくなんて考えたくない」
どうもハトのほうを大事にしているのではないかと思ったが、要は言葉を飲み込んだ。それを野暮ってものだ。