プロローグ
「伊賀美忍軍まで、因幡についたのか?」
将軍京極正親が問う。
「はい、それだけでなくつぎつぎと有力大名が因幡に下り始めています」
「もう将軍様に忠誠を誓うのは、都の近くの大名だけです」
有力大名である一色が因幡に下ってから、将軍家の威光は地に落ちていた。
いままで将軍家のことは妖怪とも言われる一色弾正が支えていた。
それは自らの保身のためでもあるが、弾正の政治的手腕は確かなものであった。
しかし、今回の戦で因幡に負け、一色家は取りつぶされることとなった。
「因幡は世に楯突こうとしていのか」
「そういうわけではありません。
久里秀平の進言にもかかわらず、猫丸は動こうとしません。
本来なら今が天下統一の時だと思いますが、めんどくさいにゃんってことらしいです」
「世の力はそこまで衰えているのか」
「まことに言いにくいのですが、その通りです。
今の都の治安は最悪となっています。
病や盗賊がはびこり、餓死者が絶えません。
因幡と友好関係にある国へ民は逃げ出しています。
無為無策の将軍様に対する不満が渦巻いています」
「しかし、因幡の国は田舎で都ほど栄えていないだろう」
「ところが、猫丸の政治手腕で因幡と友好国は栄えているということです」
「どういうことだ」
「猫丸はめんどくさいニャンとか言って、経済をすべて民衆任せにしています。
自由に商売を行うことで、民たちを活気づけています。
ただ、学者によればこのやり方では貧富の差が大きくなると言われています。
しかし、都の貧困者よりましみたいです」
「そうなのか。
世の時代も終るということか」
将軍は肩を落とす。
彼にはなにも打つ手はなかった。
彼は古い権力にしがみついて生きてきただけの化石であった。
「いえ、大丈夫でなすカブ」
一人の派手な衣装の男が御所に入ってくる。
その頭は黒光りした一本の見事な角が生えていた。
「八角錦之助」
八角と呼ばれた男は将軍の前に膝まづく、そして猫丸打倒のたくらみを話し始めるのであった。




