将軍家側近 一色弾正02
さて、そろそろ因幡の国か。
そう、わしは因幡に軍を進めていた。
猫丸たちは将棋隊のほとんどを白猫姫救出につぎ込んだみたいだ。
いくら猛将でも身内のこととなると前後が見えなくなるのだ。
これがわしらと田舎大名の違い。
まさか、わしらが進軍してくるとは思っていないだろう。
伊賀美忍軍もなかなかの働きをする。
今回、女神イザナミの加護を受けたらしい。
もともと不思議な忍術を使うやつらだったが、それがパワーアップしていた。
とくに頭領の伊賀美半蔵。
もともと神出鬼没な忍者だったが、とんでもない強さになっていた。
ただ、やつらは大名ではない。
権力に寄生しないとやっていけない奴らなのだ。
奴らに政治的な手腕はない。
ただ、あまりに強くなるようなら、考えないとならない。
それは因幡のあとで良い。
今回は3万の軍勢を率いてきた。
不知火なきあと、いちばんの目の上のたんこぶは因幡だ。
猫丸はうつけだが、あの久里とかいう側近は侮れない。
それに嫌な予感もする。
なにか猫丸を潰さないと時代が変わるような。
そう、わしらは旧勢力。
なにもかわらないほうがいい。
この谷を抜けたら、因幡の国だ。
因幡の国が攻めにくいのは、この谷があるからだ。
ここに伏兵を潜ませるとやっかいだ。
いちおう、山の上は斥候を放って確かめている。
先頭が谷を抜ける頃か。
何か前方で諍い。
まさか敵軍。
待ち伏せされたのか。
全然そんな気配はなかったはずだ。
しかし、まずい。
ここで攻められるのは最悪。
一色軍はもうすべて谷の中にいる。
後ろをふさがれたらおわりだ。
そう考えた時、後ろからも喧騒。
やられた。
前方から来るのは伊刈高広、噂に聞く猛将だ。
因幡の戦力は獣人たちだと聞くが、この軍の強さはなんだ。
たかが300位の兵なのにわが軍が押されている。
地形ゆえということかもしれないが、それにしても強すぎる。
これは一旦引いた方が良いかもしれない。
この谷をやめて遠回りとはなるが、広い街道を通った方がいい。
奇襲のためここを通ったが、まさかこういうことになるとは。
「みなのもの引け!」
「いえ、後ろがつかえています。
猿みたいなジジイひとりに苦戦しています」
まさか猿みたいな爺とは平手猿翁。
因幡四天王に数えられる剣豪だ。
最近は引退していると聞く。
「相手は一人だろう、後ろを突破せよ」
「無理です。恐ろしい強さです」
後ろの味方はどんどん数を減らしていく。
そして、伊刈の軍は攻め入ってくる。
もう、わしの近くまで来ているのだ。
「殿!」
「わかった、降参じゃ」
わしの命令で降伏の白旗が高く掲げられるのだった。




