因幡の国忠臣 木島吉嗣06
「鞍馬童子は式神だのみなんだから。
そんなの本当の術師じゃないわ」
後ろから肩まで出した着物の妖艶な女性が出てくる。
「わたしは不知火の術者、朧月。
とにかく、本当の妖術というものを見せてあげるわ」
そう言って杖を振る
杖の先から黒い影の槍が羽無殿を襲う。
羽無殿は飛び上がってよける。
槍は地面に穴を穿って消える。
羽無殿はそのまま前に突っ込む。
そう、攻撃のあとに隙ができる。
その一瞬を逃さない。
羽無殿の剣が一閃する。
達人の剣は綺麗な半円の軌跡を描く。
無駄のない最短の距離で空間を斬る。
しかし、その刃は朧月の手前で止まる。
剣を受け止めているのは闇の盾。
羽無殿はすぐに刀をひいて、後ろに下がる。
そう、羽無殿は攻撃のあとに隙ができることがわかっているのだ。
とにかく、羽無殿には隙がない。
「なかなかの術者ハム。
術者は詠唱のときに隙ができるけど、詠唱をしないハム」
「そうね。詠唱なんて原始的なことをする術者は不知火にはいないわ。
女神イザナミ様の加護を受けているからね
それにわたしは最強の魔法、闇魔法を使うの。
火とか水とか、そんな初歩的なものではないの」
「確かに闇魔法と戦うのははじめてハム」
「そうでしょう。
剣士如きに遅れをとる魔法ではないの」
「しかし、妖術は所詮まやかしの技ハム」
「まやかしだって?
妖術は剣術みたいなバカでも会得できるものと違うの。
みせてあげる。
闇魔法の力をね」
朧月はいら立った声をあげる。
かなり怒っているのか、身体に渦巻くような闇をまといはじめる。
「ではこちらも剣術の真髄をみせるハム」
羽無殿は静かにそう言って構える。
その姿は明鏡止水、気負ったところがどこにもない。
しばらく、そのまま対峙する。
しかし、しびれをきらしたのか気が満ちたのか朧月がまとった闇が羽無殿に襲い掛かるのだった。




