因幡の国忠臣 木島吉嗣05
「今度は大きくなるタヌ」
狸姫は腰に手をあてて、宣言する。
「タヌひめは、変身の天才にゃん。
化けるのが上手いにゃん」
「では、タヌ」
狸娘は頭に木の葉を乗せる。
そして、指を立てて印を結ぶ。
そのとたん、目の前にもう一体のゴーレムが現れる。
まったく同じ大きさの岩のゴーレムだ。
ただ、一つだけ違うところがある。
それは、おしりに狸しっぽがついていることだ。
2体のゴーレムは組み合う。
そのまま、静止する。
そう、まったく互角の力だ。
「どっちが、タヌひめか全然わからないハム」
「本当ニャン。さすがタヌ姫にゃん」
若殿と羽無殿は感心している。
でも、しっぽを見ればわかるだろう。
どっちも同じ力、決着はつかない。
ゴーレムは一度離れる。
そして、今度は殴り合いをはじめる。
これも互角。
仮面の少年はなにか四角い箱をいじっている。
もしかして、あれで操縦しているのでは。
それなら、あれを壊せばゴーレムの動きが止まる。
ゴーレムの肩まで登れれば、あれを取り上げられる。
ただ、垂直の岩を気づかれずに登れるのか。
わたしは背後から近づいて、ゴーレムの足にしがみつく。
幸い少年は操縦に手一杯なのか、気づいていない。
いまのうちに登ろう。
わたしは岩の裂けめに指をかけて登っていく。
そのとき、タヌゴーレムの拳が敵ゴーレムの決まる。
その振動でわたしは地にふり落とされる。
やっぱ、動いてるゴーレムに登るなんて無理ゲーだ。
わたしも獣化の呪いをかけられていたらこんなときに役にたてたのに。
無念だ。
そのわたしの前で、タヌゴーレムのパンチがゴーレムのボディに決まる。
そのまま、うしろに飛ばされるゴーレム。
それと一緒に仮面の少年も振り落とされる。
「どうして、ぼくの操縦は完璧のはずだ」
「わたしはゴーレムになりきったタヌ。
おまえの動きにはほんのわずかな遅れがあるタヌ。
それではタヌに勝てないタヌ」
タヌ姫は元の姿に戻り、少年に杖をつきつけるのだった。




