九里の国大名 九里秀平13
波良は小兵だけに、身のこなしは軽い。
懐に入って手数で勝負する。
突き払い、いろいろな攻撃方法を試す。
ただ、金剛石ゴーレムである阿にはダメージは与えられない。
ただ、波良の剣も折れていない。
「無駄、無駄。
おまえの剣では阿に傷ひとつつけられないですよ」
「基本に忠実に、これが羽無先生に習ったことです。
そして、ぼくにはこれしかできないのです」
そう言って波良は攻撃を続ける。
しかし、斬られていくのは阿のマントとフードだけ。
だんだん、阿の身体があらわれていく。
その全体は骨格だけの身体。
まるでゲームに出てくるアンデット、スケルトンだ。
ただ、その身体は金剛石製、刃物は通らない。
全身、鎧につつまれているといってもいい。
もういい。波良では無理だ。
確かに波良も剣士としてはすばらしい才能を持っている。
しかし、この式神は剣士にとって天敵だ。
羽無殿でも阿には勝てないだろう。
若い才能をここで散らす必要はない。
「波良、退け。もういい」
わたしは波良に命令する。
しかし、波良は引かない。
そのまま、阿と戦う。
波良も致命傷は受けていないが、相当阿の爪を受けて傷だらけだ。
「わたしは羽無先生に教えられていることは、基本が大事であること。
そして、あきらめたら負けなことです。
まだ、わたしにやることは残っています」
そう言って、剣を構える。
そのまま、また阿のふところに飛び込む。
阿は爪を振るう、それはぎりぎりで避ける。
そして、するどい剣撃をくらわす。
その剣は見えるようになった腕の関節を捉える。
そう、マントを切り刻んだのは相手の弱点を探るため。
そして波良はいちばん細い関節を正確に断つ。
阿の右腕が地面に落ちる。
あきらめない…か…
この若者のすごいところは素直なところだ。
そして羽無殿の教えを愚直に実行したのだ。
そして、その一念が阿の腕を断ち切ったのだ。
これで勝機も見えた。
波良は再び構えを取る。
その前で阿は腕を拾い、元のところにつけるのだった。




