九里の国大名 九里秀平09
やはり撤収だな。
こいつらと戦うには、もう少し準備をしたほうがいい。
虎丸の軍師をして活躍した猿爺に相談したほうがいいかもしれない。
あの爺は強いさけでなく、戦場ではとんでもない戦術を思いつく、いわば天才だった。
一晩で城を作ったり、水攻め、諜報活動で相手の側近を名が選らせたり。
とにかくやばいやつだった。
それ以上の軍師として銀狼なんていうのもいる。
こいつは戦場に出たことはないみたいだが、内政での力を見ても猿爺に匹敵する力があると思われる。
「九里殿、これは一度引いた方がいいかもしれませんね。
わたしがこの状況を将軍さまにお伝えします。
あいつらと戦ったのはわたしの軍ですから、いちばんあいつらの戦い方を見ています。
だから、しんがりをお願いします」
筒井殿がわたしのところに戻ってくる。
俺たちが逃げやすいように、おまえらは残って敵を食い止めてくれってことか。
まあ、都の大名なんてこんなもんだろうな。
将軍様の威光で、実際の戦いはない。
だいたいは話し合いや小さな戦で解決する。
そんなことを繰り返してきたやつらだ。
使い物にならないのは最初から解かっている。
やっぱり、この国は猫丸殿が治めるのがいちばんいい。
「わかりました。
筒井殿が将軍のもとに行けるよう食い止めましょう」
たぶん、食い止める必要はない。
これは不知火のパフォーマンスだよ。
自分たちの力を見せつけて、将軍に伝えさせる。
たぶん、戦った大名は自分の失態にならないよう、盛って伝えるだろう。
相手が強かったのでしかたがなかったってね。
そうすれば、将軍の側近たちも怯んで、日和り始める。
少し戦うだけで、無血開城なんていうのもありうるのだ。
虎丸ならそんなめんどうなことは考えないが、同じ魔王を称するものでも不知火は違う。
いままでの戦の記録を見ても、緻密な計算をしているように感じる。
九里七人衆が次々と帰ってくる。
まわりの戦況を報告する。
とにかく、思った通り筒井を討ち取ろうと追ってくる気配はない。
ゆっくりと都に向かって進軍する。
わたしは相手を睨みながら後退する。
筒井殿と一緒に逃げるわけにはいかない。
今は戦っているふりも必要だ。
わたしと伊刈殿のまわりは七人衆が守る。
たぶん、将軍家はこれで終わりだろう。
だが、因幡国連合は不知火に屈するわけにはいかない。
とにかく、国に戻って戦支度だ。
因幡の国での戦争は数か月先になるだろう。
そこまでに対策を考えればいい。
絶対になんらかの弱点はあるはずだ。
そう考えながら、都の門まで戻る。
門を閉めて少し休憩をする。
「あなたは九里秀平、因幡の国の大名ですよね」
いつのまにかわたしの前には長髪の黒いマントの男が立っているのだった。




